森の守人 第一章

□イケメン登場
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「…うるせぇ」



帰りぎわ、時人はあまりの人の多さにイライラしていた。ただでさえ人混みが嫌いな時人には迷惑な話だろう。



「墨村、あの男に連れていかれたんだよな?大丈夫なのか?」


「八王子君也だろ?まぁ大丈夫じゃないか?」



時人は、「墨村」に反応していた。
墨村と雪村という苗字は滅多にいない。まさか…



「おい、そこの」


「!雪村時人!?」


眼鏡じゃない方の男子が反応したが、どうでもよかった。



「今、墨村って言わなかったか?」


「あぁ、墨村美守ですけど…」


「(やっぱりか…)詳しく話してくれ」



時人は眼鏡じゃない方の男子、田端から一部始終をきいた。



「(まさか…誘拐!?)」


時人は、あり得ない速さでそこを離れた。



「…雪村時人は墨村を純愛してるっと」



焦る市ヶ谷に構わず、田端はちゃっかりメモを書いていたのだった。











「(ん?)」


志々尾は、妖の匂いを感じ取り、追ってみた。
そこには、少女を腕に抱いた男が路地を歩いているとこだった。



「志々尾!!」


「雪村の…」



そこへ、時人がやってきた。どうやら目的は同じらしい。



「このあたりで、怪しい男を見てないか!?」


「…」



志々尾は無言で指差した。時人はそれを見ると、鋭く睨んだ。



「あいつ…美守をどうするつもりだ」


「…墨村!?」



妖に集中していて気づかなかったのか、志々尾も慌てて見た。
確かに美守だ。



「何故あいつが…」


「とにかく追うぞ!」



二人は後を追った。男、八王子はどんどん人気のない方へと進む。



「(チッ…あの男、絶対に殺す!!)」


「(あの運動能力…)」



二人は違う事を考えながら追うのだった。










「…う…」


「気がついたかい?」



美守が目を覚ますと、そこには八王子君也がいた。



「あの…」



言葉を発しようとした時、美守は違和感に気がついた。



「(この人…)貴方は何者ですか?」



そう言ったとき、八王子はニヤリと笑い、彼の頭から妖が出てきた。



「(あれは…)」



見ていた志々尾と時人も少し驚いた。



「妖は夜しか行動できないはずじゃないのか?」


「あれは人に寄生してる妖だな…人を操り、動いてるんだろう」



疑問に思う志々尾に、時人は答えた。



「貴方の目的は?」


《君の、体》


「(!?)」



答えに、時人は茫然としていた。



「(女の方に乗り換えようってことか)」



志々尾は若干思考停止しかけている時人を見て、かなり不安になった。



「何を…すれば?」


《耳元で、ついでに心もこめて…名前を呼べばいい》


妖は八王子の手でナイフを持ち、首元に構えた。



《さぁ、早く》
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