森の守人 第一章

□少しずつ
1ページ/2ページ



美守は昨夜の妖の言っていた「奴ら」について考えるため屋上へ向かっていた。
(教室には式神を置いてきてある)



「(あれ?誰かいる…)」


覗き込むと、そこには志々尾が寝転んでいた。



「(志々尾君!?お…起こさない方がいいかな…でもここで寝て風邪でもひいたら…)」



その時、志々尾が無言でこちらを見てきた。



「し、志々尾君…えっと、邪魔しちゃった?」


「………」



ゴロっと反対側を向いた。


「(ノーリアクション!?)えっと…座ってもいいかな?」


「…好きにしろ」



美守はなるべく離れて座り、ボーッとしていたが、沈黙にたえきれず、思わず声をかけた。



「志々尾君って、妖混じりっていうものだよね?」



志々尾はピクッと反応したが、美守は気付かず、続けた。



「それってここにいたらマズイんじゃないの?」


「それについては散々注意を受けた。力を制御できていればむしろプラスに働く。」



淡々と話す志々尾に気になっていた事を聞いた。



「怪我は平気?」


「…問題ない(フン…こいつ…同情でもしてんのか?)」


「…ホントに?」



美守は志々尾の方を見て再び聞いた。



「ああ」


「ホントにホント?」


「…ああ」


「嘘じゃない?」


「しつこいな!あんな傷すぐに治るんだよ!だって俺は…」



  “化け物だから”



しかし、その単語がでてこない。



「…違う」


「?…!!?」



志々尾は見ると、美守が泣いてるのに驚いた。


「志々尾君は…化け物なんかじゃないよ?」


「…お前に何が分かる?」

「志々尾君…」


「ちゃんとした家で育って、普通の人として生きてきたお前に俺の何が分かるんだよ!!」



志々尾の怒鳴り声に驚いたが、美守は真っすぐに志々尾を見た。



「私は…普通じゃないよ」

「?」


「家族の中で、自分だけが異端なんだよ…志々尾君も、そうだったんだよね?

でも、ちゃんと人間として生きてこれたのは…いろんな人が傍にいたから。

志々尾君にだっていたはずだよ?」


「…なんでそう思う」


「だって志々尾君、」



“ちゃんと自分の意志を持っているよ”
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ