森の守人 第一章
□限と恋のアタック
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「志々尾君、何かあったの?なんか苦い表情だよ?」
夜、いつものように烏森の警護にあたっていたのだが、美守は志々尾が不機嫌な表情をしているのに気づき、聞いた。
「…見られた」
「へ?」
「他の奴に、屋根を跳んでるのを見られた」
「…えぇ!?」
しかも詳しい話を聞くと、恐らく烏森の生徒だと言っている。
「知ってる人?」
「いや…というか、お前ら二人以外俺は生徒を全く知らない」
「(単に覚えていないだけなんじゃ…?)」
これだけ日がたっているのに…しかも口振りからして同じクラスの者も知らないということになる。
「でも暗いから分からなかったんじゃない?」
「今日は月が明るい。しかも俺のいた方にちょうどあったからな…」
美守はなんとなく月をバックに飛ぶ志々尾を想像してみた。
「(結構似合う…)」
志々尾は顔が悪いわけじゃない。むしろ、もてるくらいだ。
「…何を見ている?」
「え?あ、ううん。格好良いなぁって」
「は!?」
不意討ちの言葉に思わず目を見開いた。
「え?何か悪い事言ったっけ?私…」
「…」
自分で気づかない美守に少し呆れ、赤くなった顔を見られないようにその場を離れた。
「志々尾君Σ!?」
美守は驚いて呼んだが、その場に志々尾はすでにいなかった。
「…私何か悪い事言ったのかな?斑尾」
〈…悪い事は言ってないよ。(まぁあんな風になるような事は言ったけど)〉
美守はわけもわからず、とりあえず仕事に戻る事にした。
「なんなんだあの女…」
志々尾は木の上で顔を赤くしながら空を見た。
「(頭領に知られでもしてしまったら…)」
あの男のシスコンぶりは志々尾も理解してしまっていたので、ゾッとした。
「(でも…)」
不思議なことに、嫌だと思わない自分に疑問をもった志々尾だった。