森の守人 第一章

□覚悟
1ページ/2ページ



「時人!」


「美守…やっぱり来たのか」


「うん…仕事は仕事だし」


美守は無理矢理出て来たのだ。
何かしていないと落ち着かないらしい。



「無理はするなよ」


「うん…志々尾君は?」


「…見てないな」


「そう…」



美守は気になっていたのだ。恐らく、時人も同じだろう。



〈何さ辛気臭いねぇ〉


〈ほらトッキー!妖の匂いだぜ!〉


「それで呼ぶんじゃねぇよ(怒)」



時人はそう言いながら、白尾と共に仕事へ向かった。



〈ほら美守!あたしらもさっさと行くよ!〉


「うん…」



美守はまだ落ち着かない。斑尾は溜息をついて言った。



〈何があったのか知らないけどさぁ、今は目の前の事に集中しな〉


「…うん」



美守は頭を振り、妖のいる方へ向かった。
















「はぁ…まだいる?」


〈いや、大分片付いたみたいだねぇ〉



大方終わると、美守はその場に座り込んだ。



〈なんだい?もう疲れたのかい?〉


「休憩〜…」



美守は空を見上げた。
今夜は満月で、星明かりも美しかった。



「(あの時も…こんな空だったなぁ…)」



400年前、死に際に見たのは悲しいくらいに美しい夜空だった。



「寝転んでんじゃねーよ、美守」


「時人…」



時人は美守の隣に座り、同じようにして空を見上げた。



「…あの時と同じだな」


「…うん」



斑尾と白尾は、気をきかせたのかそこにいなかった。


「ねぇ、時人」


「志々尾の事だろ」



疑問符をつけないのは彼らしいと苦笑した。



「俺も考えていた。いずれは皆に話さないといけないしな…けど、まだ時期じゃないと思っていた」



美守は黙って時人の言葉に耳を傾けていた。



「だが、お前も分かるだろ?俺達の記憶は少しずつ薄れてきている。完全に失う前に、誰かに話さないといけないんだ」



二度と同じ過ちを犯さないために、真実を誰かが受け継がないといけない。

自分達がまた生まれ変わるとは限らない。
今回はは、たまたまにすぎなかったのだから。



「…私、志々尾君には知ってほしい。怖いけど…ちゃんと話したい」



言って信じてもらえないかもしれない。
それでもいいから、志々尾にだけは真実を知ってほしいと思った。



「…不本意だが、俺もだ。正守に話すよりいい」



時人はそう言い、立ち上がった。



「先ずは、あいつを探さないとな」


「!うんっ」



美守は笑顔で答え、時人と同じように立ち上がった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ