森の守人 第一章

□終わりと美学
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「なにあれ…中身大きさデタラメだよ!」


「(あの皮…中身はどんな形でもいいのかよ)」



すると、翼を持つ茶南が二人に向かって呪力よけの石を投げてきた。



「結界は意味ない…よけろ美守!!」



間一髪の所で、二人は左右によけた。

すると、白い煙が周りを囲んだ。



「(これ煙幕…いや、まさか毒ガス!?)時人!!大丈夫!?」


《大丈夫だよ、ただの煙幕だから》



この声は茶南だろうと、周りを見渡した。
しかし、煙で誰がどこにいるか分からない。



《でも、これはどうかな?灰泉》



すると、あの塊が上から降ってきた。



「溶けてきた…!」


「美守!」


「時人!?」



美守はすぐに、声のした方によけた。



《さて、分かるかい?これで君達はさっきと同じ状態になったわけだ。

君達は相手の正確な位置がわからなきゃ結界で囲めないんだろう?

そして僕らは引き続き君達の防御を無力化した、攻撃できる。

大人しく負けを認めて降伏すべきだと思うがね、なにしろ…

こちらには人質だっているんだから》



その言葉に、美守は悔しそうな顔をした。

返事がないことで、しばらく酸性の雨が降ってきた。



「ムカつくな…なぶるつもりか奴ら。美守、一応ばあさんに奴らのことを言ってある。

本性も出してきた。異変に気づけばすぐ来るとは思うが…」


「…正直、待ってはいられないよ」


「だろうな…」



しばらく無言が続き、やがて美守が口を開いた。



「志々尾君…きっと気づいてたんだね。黒髪の人の速さに…時人もでしょ?気づいたの」


「…」


「私、全然分からなかった…本当に甘く見過ぎてたんだよね…」



話し合い、という言葉にどこかで安心しきっていたのだろう。



「それを言うなら俺だ…気づいておきながら何も出来なかったんだからな。

だから…」



時人は恐らく空にいるであろう見えない敵を、睨み付けた。



「この借りは必ず返す。
その前に死なれるわけにはいかないな」



不器用な言葉に、美守は笑って頷いた。
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