森の守人 第一章

□夜行 翡葉京一
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しばらく放心していたが、ハッと我にかえると、瓦礫へ走った。



「時人!!」


「美守…無事だったか!?」


「うん…待ってて、今周りのどかすから!」



少し時間がかかったが、なんとか瓦礫をどかし、時人は結界をといた。



「悪いな…」


「…首、」


「?」



時人の首は僅かにきれていた。

茶南の刄で少し切れてしまったのだろう。



「ごめんね時人…私がもっと注意深くしてたら身代わりなんて…」


「気にするな、あれは仕方な「仕方なくない!!」


「美守?」


「仕方なくないよ…」



美守の目には涙がたまっていた。










もっと自分が周りを見ていれば








もっと自分が集中していれば







もっと自分が強かったら…









後に残るのは後悔ばかり。
美守は己の非力さに手を握り締めた。



「大したことない。俺を誰だと思っているんだ?」


「もう…」



時人は美守の頭をくしゃくしゃと撫でると、立ち上がった。



「あいつもそろそろ迎えに行くか…ん?」



時人は誰かがこちらへ来るのに気付くと、美守を背後に回した。



「志々尾君!?」


「…」



二人はバッと構えたが、男は笑顔で止めた。



「あ、待って待って。俺夜行のもんだから」



ホラ、と言いながら手袋のマークを見せてくる。



「夜行!?」


「そう。主に見張りだけど、烏森の警護に派遣されてる。

翡葉京一です。以後よろしく」



笑顔で名乗る翡葉という男に、美守は警戒心をゆるめた。

時人は、気に入らないというように翡葉を睨んでいる。



「でも、志々尾君さっきまで凄い邪気を放ってたんですよ?
なんでそんなことに…」


「…禁を破ろうとしたんでね。俺が眠らせた」


「禁…?」


「このバカまた暴走しやがってさァ…あ、でも安心していいぜ。

禁を破ったこと報告すればこいつすぐ解任だから」



笑顔でとんでもないことを言う翡葉に、美守はなんとなく身近に感じると思ってしまった。
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