森の守人 第一章
□対立
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一方、志々尾は挨拶にまわっていた。
(雪村には行ったので墨村にいる)
「えっ、志々尾君うちの正守と知り合いなの!?」
「あ…ハイ。あの…正守さんにはいつもお世話になって…」
「へー!へー!」
志々尾から話を聞いてものすごく嬉しそうな修史。
「ようし!ちょっと待ってて!いいものを持ってくるよ!!」
勝手に話を進め、どこかへ行った。
数秒後…
「うちの子は皆素晴らしくてね。正守なんかホラ昔から格好よかったんだから!!」
勝手に子供の自慢を始める修史に少々志々尾は少し…いや、大分とまどった。
「利守はまだ上手く結界が使えなくてね。でも、凄くいい子なんだよ!」
ふと、志々尾が目を通すと赤ちゃん…右手の証を見たとこ、恐らく美守と思われる写真をみた。
「美守はね、生まれたときから体が弱かったんだ。」
「え…?」
「小さい頃はすぐに倒れたり、風邪をひいただけで命に関わったりしてね…だから、人と関わるのが怖くなっていたんだ」
近所の友達に、体が弱いからいじめられる事も少なくなかった。
「でも、そんな時いつでも正守か時人君が傍にいてくれてたんだよ」
修史は懐かしむように話していた。
「美守の友達が遊びに来るのなんて滅多になくてね…」
「いや、俺は…「志々尾君」」
否定しようとしたが遮られ、とりあえず返事をした。
「あの子を…美守を、よろしく頼むよ」
「…」
志々尾はあまりに真剣な視線に何も言えなくなった。
「ただいま〜」
「あ!美守。おかえり。今ね…」
「?どうし…え!?志々尾くん!?」
美守は志々尾を見て驚いたように声をあげた。
「あ、そうそう。美守、お爺ちゃん見なかったかい?」
「見てないけど…どうかしたの?」
「志々尾君が用があるらしくてさ」
美守は何となく感付いた。
裏会の夜行なんだから、挨拶しにでも来たのだろう。
「あの、俺帰ります」
「え!?どうして!?」
「当主がいないのでは、用もないので」
「あ!じゃあご飯食べていきなよ!」
修史はどうしても志々尾にとどまってほしいのか、必死に説得している。
「どうかしたのか?」
「あ、お帰りなさいお爺ちゃん」
繁守は志々尾を見ると察したらしく、志々尾を連れて自分の部屋へ行った。
「それにしてもいったいなんの話だろうね?」
「…お父さん、ご飯作るの手伝うよ」
烏森についてだろうとは思ったが、何も言わないでおいた。