森の守人 第一章

□正守と限
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その夜、志々尾は屋根の上で寝そべっていた。



「(あいつが…頭領の妹で、正統継承者…)」



兄の正守とは似ているようでまるで似ていない。


ピリリリッ


携帯の音に気づき、慌てて電話にでた。



「も、もしもし」


『ああ、仕事中ごめん。どう?そっちは』



電話の相手は正守だったらしく。敬語になってる。



「……アイツ、大したことないですよ」


『そう言うなよ。俺の妹だぞ?』



正守は電話の向こうで恐らく笑っているだろうと思われる調子で話した。



『まぁ任務だからってまだ気張る必要はない。ホラ…そこの学校って人多いだろ?

楽しめよ、学校生活とか』

「…俺は…そういうのはもう…」


『限』



正守は言葉を遮った。



『ちゃんと自分から女の子に話し掛けられるようになれよ。』


「なっ…うるさいな」


『ハハハ、俺の妹はいい子だからちゃんと仲良くしてくれよ?あ、でも手は出しちゃ駄目だよ?』



電話越しでも分かるくらい、黒い声で言ってきた。



「誰が!!だってあいつらギャーギャーうるさいし…
すぐ、壊れそうだし…」



志々尾は己の手を見ながら言った。



『限。お前はもう、ちゃんと力の加減ができるはずだよ。
だろう?』



志々尾はしばらく黙って口を開いた。



「…あの、頭領」


『ん?』


「実は…」


『…場所が悪い、か』


「え?」



訳の分からないことを呟いた正守だったが、電波が悪いと言い一度切った。

携帯をしまおうとした時、再びかかってきた。



『あぁ、ごめんごめん。で?話って?』



何事もなかったように言う正守に少々疑問が浮かんだが、とりあえずは聞くことにした。



「何故…俺をここに?」



正守は間を置いて言った。


「まあ…そうだな…派遣の理由はいろいろあるけど…
美守と、合うと思ってさ」
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