森の守人 第一章

□大首車
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「(よし、回転スピードには慣れてきた…)」


“いける!”


そう判断すると、志々尾は妖に蹴りを入れた。
妖は窓を破って外へ飛んでいった。



「ちょ、待ってよ志々尾君!!」



美守は止めたが、構わず志々尾も妖の後を追っていった。


妖は回転しはじめたが、志々尾によって回転は止められた。



「すごい…回転止めちゃった…」



しかし、美守はハッとしたように気づいた。



「(あの床のえぐれかた…ヤバイ!)志々尾君ダメ!離れて!!」



しかし遅く、妖の出した刄によって、志々尾は下に落とされてしまった。



「志々尾君!!」


〈ホラ空いたよ。あんた早くあの丸いの倒しな。〉


「な!?確かにとっさに避けてたけど結構深く入ったよ!?早く治療しなきゃマズイんじゃ…」


〈平気さ。だってあの小僧…〉



斑尾の言葉に、美守は目を見開いた。










「結!!」



下では、時人が落ちた志々尾を結界で受け止めていた。



「…お。志々尾。」


「………」


「遅い。まぁ声は聞こえてるようだな。」



時人は腕を組みながら志々尾を見て言った。



「ぐ…」


「まだ動くな。心配ない、あの程度の雑魚、美守に任せて問題ない。」



時人の言葉に志々尾は上を見た。
美守は何かを狙うような結界をはる。



「(何を狙ってる?)」



志々尾はのそっと起き上がった。



「おいまだ…」



時人は言い掛けて言葉を止めた。



「(傷が…?)っておい!待て志々尾!!」



時人は行こうとする志々尾を止めたが、志々尾は無視して美守を見上げた。


スパァッ


結界が破られたが、美守の顔には笑みがある。


「(…なんだ?いや…知っている…この感じ)」



美守は結界に妖が丁度よくはまると、素早く顔面を叩いた。



「(狙っていたのは相手の動きを止めるタイミングと力加減か…でも…

あいつ、あんなに強かったか?)」



未だ攻撃を続ける美守を見て思った。



「(いや、知っている…戦いの状況に合わせて変化し、その集中力と共に全ての感覚を尖らせていく…時々いるんだああいう…)」


“戦いの中で進化していく奴が!!”



「結!!」



美守は妖を囲んだが、すぐに逃げられた。



「(まだダメージ与えないと滅は無理かな…)」



そこで、志々尾がいることに気がついた。



「志々尾君大丈夫?もう暫く休んでいいよ」



後ろを見ながら言う美守の目は蒼く変化をしていた。

志々尾が落とされ、直後変化したらしい。



『美守と合うと思ってさ。』


正守の言葉を思い出す。



「…そういうことかよ」



“こいつ…俺と同じタイプだ。”




志々尾は美守の背中を見て思った。
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