森の守人 第一章
□正統継承者
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〈大概の奴はさ、もっと力を持て余すんだよ〉
その力に飲み込まれて人間の感覚を完全に失ったり、あるいは力を恐れてそれを使わない事に一生を費やしたりする。
「ハッ…世捨て人か」
〈ああ…でも、あいつはその力を完全に支配下に置いている。〉
あそこまでなるには、血のにじむような訓練を重ねた上に、強い精神力が必要だと白尾は言った。
〈ただでさえ妖混じりは肉体が変化する分、化け物扱いされやすい…相当苦労したろうな、あいつ〉
「…フンくだらねぇ」
素に戻った時人を白尾は見た。
「例えそうだとしても、ここは俺達結界師が守る場所だ。妖混じりだろうが、どんな訓練したやつだろうが、勝手な真似は許さねぇ。
あいつも、例外じゃねぇんだよ。」
時人は志々尾を鋭い目で見ながら言った。
「お手並み拝見といこうじゃねぇの。妖混じりの実力ってやつをな」
楽しそうに笑う時人を見て、白尾は冷や汗をかいていた。
〈(こう笑うトッキーに関わるとろくな事ないんだよな…早くしてくれハニーっっっ!!(涙))〉
黒いオーラを出す時人の隣にいたくないらしく、切実になった。
「志々尾君!ちょっと!(どうにか一瞬でも完全に動きを止めれば…)」
〈美守!何やってんのさ!?しっかりやんな!!〉
「分かってるけど…!」
斑尾の方を見て、ハッとした。
「(そうだ校舎なら…)」
志々尾の方は振り回されながらも妖の刄をとっていた。
〈邪魔くさいねィ…あんたなんか倒しても何も出ないってェのに…
およびじゃないってんだよゥ!!〉
ドゴォンッ
「志々尾君!ちょっとどういう意味なの!?私を倒して一体なんのメリットがあるの!?」
《あんたはァ…あたしらの間じゃ賞金首みたいなもんさァ。しかもこの土地…奴らァいい所教えてくれたよゥ》
「(奴ら?)」
しかし妖が再び逃げ出し、美守もまた結界をはった。その時、
「あ!」
志々尾が美守の結界を使って妖をおいかけはじめたのだ。
「(結界を使って!?)」
そして、校舎に向かって妖を蹴り飛ばした。
「(今だっ!)結!」
結界をはると、妖は跳ね返り、校舎に入った。