森の守人 第一章

□正統継承者
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美守は素早く妖の入った校舎に入った。



「結!」


《キョ…何さァ、こんな結界あたしの回る歯で何度でも…》



しかし、妖の顔の部分だけが囲まれ、回れなかった。


《ぐ…》


「ねぇ…」



美守はゆっくりと妖に近づいた。



「奴らって、誰?」



美守の蒼く変化した目は、酷く冷めており、怒りも何も感じない。

強いて言えば「無」

しかし、その無感情な眼が妖は酷く恐ろしかった。



《あ、あ、あたしも実はまた聞きでよく知らないのさァ、そうだァ今からひとっ走り聞いてきて…》


「滅!!」



鋭い叫びと共に妖は跡形もなく消えた。



「(なんだあいつ…囲むのと動きを止めるのを一つの結界ですませやがった…

この手際…デタラメに術を打ってるのかと思ったら全て計算ずくなのか!?

いや…校舎につっこませるのは考えていたとしても…あとは流れを利用しただけだろう…)」



そこで志々尾はハッとしたように思い出した。



「(あいつ…俺も利用しやがった!?

全部持ってかれた!!)」


志々尾は悔しそうに口をギリッと噛んだ。

そんな志々尾に気づかず、美守は考えている。


「(なるほど…正統継承者ね…)」



志々尾は美守を見ながら思った。
そして、ある事に気がついた。



「(そういえば…眼の色蒼くなかったか…?)」



志々尾はよく見たが、眼は普通の黒だった。



「…?」


「美守、何か分かった事はあったのか?」


「あ、時人」



時人はチラッと志々尾を一瞥したが、それだけで、美守に近づいた。



「(…見間違いか?)」



志々尾は未だに美守を見て思った。
時人は、その視線に気づいていたがあえて言葉をかけなかった。



「(こいつには…まだ教えられないな)」



そんなことを思いながら…
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