森の守人 第一章

□少しずつ
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「自分の…意志…?」


「志々尾君は、化け物じゃない。ちゃんとした人間なんだよ。」



美守は志々尾に近づくと、手をとった。



「!?」


「ほら、こんなに温かい手をしてる」



ドクンッ

心臓が波打ったのを感じた。

人にそんな事を言われたのは初めてだった。



「っ触るなっ」



この少女には触れてはいけない。そう感じた。



「志々尾君…?」


「俺の手は…汚れてるんだ…」



いくつもの妖達をこの手であやめてきた。



「だから…触るな」



お前まで血に汚れたら、頭領に合わせる顔が無い。



「…」



美守は黙って志々尾を抱き締めていた。



「なっ…」


「抱え込まないで、1人で…志々尾君を想う人はここにもいるんだよ?」


「墨、村…」



しばらく、美守も離れず、志々尾も振り払わなかった。



「(なんでだ…?嫌じゃねぇ…むしろ、温かい…)」


しばらくして、ハッとしたように美守は慌てて離れ、謝った。



「ごめんっ、志々尾く…」

「気にしてない」



また沈黙が続いてしまい、美守は気まずそうに立ち上がった。



「わ、私もう行くね!」


「あ、ああ…」



心なしか、志々尾も大分戸惑ってるらしい。



「っと、志々尾君!」


「…なんだ?」



美守は降りる寸前に志々尾を見た。そして…



「今夜もよろしくね!」


「っ!!」



満面の笑みで言われてしまい、志々尾は思わずそっぽを向いた。

美守は飛び降りてそのままクラスへ戻った。



「(な…なんなんだ!?あの女っ!)」



何故心臓がバクバクいってるのかも分からず、思考を無理矢理閉じるかのように目を閉じた。








気持ちに気づくのはまだまだ先の話し。
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