森の守人 第一章

□彼女のいない夜
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「なんだ?今日は墨村休みなのか?」


「風邪らしいぞ」


「墨村が?まぁ体弱いらしいしな…」



美守がいない事を田端と市ヶ谷は物足りなく思っていた。
そして…



「(美守ちゃんが休み!?)」



百合奈もまた、美守が傍にいるのが当たり前になっていたため、少し…いや、かなり不安だった。



「大丈夫かなぁ…」



百合奈はそう思いながら、教室を出た。その時、



「おい」


「…?ひっ!」



突然声をかけられた方を振り向くと、そこには志々尾が立っていた。



「なななな何か!?」


「…あいつは?」


「(あいつ?あ!)美守ちゃんは今日風邪でお休みなんです。ごめんなさい」


「(風邪…)」



志々尾は昨日の事を思い出すと、なんとなく不機嫌そうに出ていった。



「な…なんなの?あの人」


百合奈は思わずへたりこんでしまった。













「雪村く〜ん、ちょっと手伝ってくれな〜い?」


「(ウゼェ)」



時人は、ある女子の猫なで声にうんざりしていた。



「ねぇ〜」


「うるさい」


「いいじゃなぁい」



気やすく触ってくる女子の手を払い、時人はスタスタと立ち去った。



「おい」


「あ?」



そこにいたのは志々尾だった。



「…高等部に何のようだ?一体」


「墨村が休みらしい。…って聞いたか?」


「いや…チッ。やっぱりそうか…」



どうやら、薄々気づいてはいたらしい。



「わざわざ報告しにきたのか?」


「いや…」



志々尾は少し戸惑いながら言った。



「何か…違和感があるんだよ」



いつもの風景なのに、何かが違う。
何かが物足りない。



「奇遇だな。俺もだ」



原因は分かっていた。
しかし、志々尾は気づかないふりをしていた。



「…あいつ一人いないところで守備に支障はない」


「なっ…そんな言い方はないだろ!?」



まさか時人の口からそんな事を言われるとは思わず、志々尾は言った。

しかし、時人はニヤリと笑っていた。



「やっぱり気になるんだろ?志々尾」


「!!」



時人は見抜いていたらしい。
志々尾が気づかないふりをしていたのに。



「けど、代わりは来るだろうな。…あまり来てほしくないが」


「?」



時人が苦い顔をしているのに、志々尾は首をかしげていた。





理由は今夜知る事になる。
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