企画

□先生ではなく銀時が幕府に連れ去られたら、なIf話
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「「ごちそうさまでした」」

二人でぱちんと手を合わせて食べた物に感謝。
茶碗と小皿を持って台所へ向かうと後ろからとてとてと子供らしい小さな足音。
後ろに視線を向けると何枚か重ねた皿をせっせと運ぶ銀時が。
自分から手伝ってくれようとする銀時に微笑ましくなる。
漸くこの家での生活にも慣れた拾い子は、最近では自分から色々と手伝いをしてくれるようになった。
最初の内はぎこちない手つきだったが、回数を重ねる内に自分よりも器用に家事もこなせるようになってきた。
二回に一回は黒焦げにしてしまっていた白米も、銀時がやり方を覚えてからは三食おいしいほかほかご飯だ。
今日の朝ご飯も二人で作ったものの、半分は銀時が作ってくれたものだ。


「先生、洗い物やろうか?」

「ありがとう、でもそろそろ晋助と小太郎が来る時間ですから、銀時は先に歯を磨いてきてしまいなさい」

「うん、終わったら手伝うね」

「待ってますね」


こくんと小さく頷いて小走りで去っていく軽快な足音を背に、皿を手にとる。
今日こそは割らないように気をつけなければ。
慎重に皿を持ち上げるとまた子供の足音。
忘れ物だろうかと不思議に思っていると、勝手口からひょこりと二人の教え子が顔を覗かせた。


「先生、おはようございます!」

「おはようございます」

「あぁ、晋助と小太郎でしたか。今日はいつもより早いですね」


後ろへ振り返ろうとした瞬間、つるりと手の中をすべる感触。

あ。

三つ重なった音と共に皿の割れる音が。


「…またやってしまいました……」

「…銀時に怒られますね、これは…」

「これで十二枚目でしたっけ…」


またやってしまった、と反省していたら急いだような足音が迫ってくる。
教え子二人は苦笑を浮かべ、勝手口へ視線を向けた。


「先生っ!」

「銀時…すみません」

「また割っちゃったの?」


心底困ったような目で見つめてくる銀時。
罪悪感を感じながら謝ると、銀時は困った顔はそのままに苦笑を漏らした。


「先生が怪我してないならいいよ、片付ければだいじょうぶだし」

「俺達も手伝おう」

「半分俺達のせいみたいなもんだしな」

「あれ、二人とも来てたんだ。おはよう」

「…私も手伝います」

「先生は…その…」

「先生は、ちりとりと箒持ってきてくれるとうれしいな」


にこりと満面の笑みで頼まれてしまっては断れない。


「すぐ持ってきますね、三人とも怪我しないように気をつけて」

「「「はい!」」」


台所から離れてしまった私は知らない。
あんな会話が三人の間で交わされていたことなど。














「…銀時も大変だな」

「先生他のことはなんでも上手いし器用だけど、家事だけはからっきしだもんな」

「先生のご飯もおいしかったよ?温かいしやさしい味だし」

「……お前はやさしいな」

「へ?」

「俺達は正直先生のことは大好きだし尊敬もしてるがな…先生の飯だけは食べられねぇよ…」

「高杉と同意見なのは至極不愉快だがその通りだな」

「んだとヅラ」

「む、何か気に障るようなことを言ったか?」

「死ね」

「晋兄、そういうこと言う晋兄は嫌い」

「聞いたか高杉!銀時はお前のことなど嫌いだそうだ!兄とも思いたくないそうだ!」

「そこまでは言ってないよ…」

「…マジうぜぇヅラ」

「ヅラじゃない桂だ!」





 
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