企画

□白鬼は嗤う〜第一章〜
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「ったく人様の家の前でとんでもねぇ騒音披露しやがって…」

「元々はじーさんがガシャコンガシャコンうるさかったのが原因ネ」

「ガシャコンじゃねぇガシャッウィーンガッシャンだ!」

「いやそれほとんど変わらないです」


元々聞こえていた騒音も止まり、なんとか納得してくれた近所の方々を返すと、出てきた源外は再び屋内へと戻ろうとした。
が、再びあんな騒音をたてられてはたまったもんじゃない、とお登勢から万事屋にもう一つ依頼が増えた。


「何勝手に人の家漁ってんだテメェらは!」

「わざわざ住宅街でこんな騒音たてるから苦情が来んだよ。だから人の少ねェ所に移植する」

「「あいあいさー」」

「勝手に決めてるんじゃねぇ!くそ、三郎が動ければ…」

「三郎?」

「ああ、そこにいる機械だ」


源外が指差した先には壁に寄りかかる機械が。
どうやら今は動かないらしい。


「ったく、三郎にお前らを追い返させようとしたんだが、あまりの騒音にプログラムが停止しちまった」


だから俺が出てかなきゃならんかったんだよ、とぶつぶつ不平を漏らす源外だったが、誰一人聞いてはいなかった。


「やっぱり晋ちゃんの予想は当たってたネ」

「騒音には騒音を、だ。あの不協和音を奏でられるのは俺らしかいねェ」

「ほら、なんでもいいからパパッと終わらせちゃいましょうよ」

「お前らほんっと人の話聞かねぇな!」

「…諦めな」


生温かい目で自分を見るお登勢に、全てを諦めた源外だった。





























「終了だ」

「いやぁだいぶ疲れました…」

「これでどれだけガシャコンしようが文句言われないアル、良かったナ」

「いや良くないわ!全部壊れてんじゃねぇか!」


河川敷に全ての機械を運び込んだ万事屋だったが、(主に神楽の機械の取扱いの荒さで)ほとんどの機械は破損していた。
ちなみに三郎は源外が少しいじった所、重大な故障だった訳では無いらしく、自分で河川敷まで歩いてきた為無傷だ。
むしろ三郎以外は全てどこかしら破損している。


「最悪だ…これじゃあ祭りに間に合うかどうかわかりゃしねぇよ…」

「祭り?」

「あ、明日開かれるやつですか?将軍様が来るっていう」

「ああそうだよ…将軍様にカラクリ芸見せろって命が幕府から来てるのさ」


それなのに…と肩を落とす源外の背中を神楽がバシバシと叩く。
どうやら励ましているつもりらしいが原因は神楽自身である。


「まァ頑張れやじいさん」

「依頼くれれば手伝うんで!」

「頑張れヨー」


最終的に全て放り投げた高杉達は、何気なく宣伝しつつ河川敷から去っていく。
アイツらどれだけ俺に金銭的ダメージを与えるつもりだ、と思いながら源外は機械の山に向き直った。
これをどうやってでも明日の夕方までには直さねばなるまい。


「…大丈夫なのかい?」

「大丈夫も何もやらなきゃならんだろう」

「そうじゃない…アンタのことさ。アンタの息子は……」

「お登勢よ」


何か言いかけたお登勢を遮った源外はがちゃがちゃと機械をいじり始めた。
そしてお登勢と目を合わせることなくぽつりとつぶやいた。


「人は忘れなきゃやっていけねぇ生き物だよ」


それだけ言うと、源外はもう口を開かなかった。


「アンタ…」


何か言いたげな顔をしていたお登勢だったが、どうやら何を言っても無駄だと悟ったようで、一つため息をつくとその場を去っていった。







この時誰一人、橋の上でそれを眺めていた男に気づくことは無かった。





 
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