企画

□白鬼は嗤う〜第二章〜
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神楽が括られた丸太を抱えながら走っていた新八を砲撃が襲った。
その衝撃で丸太は手から離れていき、神楽の体は宙を舞った。

「神楽ちゃん!!」

このままでは神楽が此処から落ちる。
必死で伸ばした手が神楽の手を掴んだことに安堵したものの、丸太の重みが新八の腕にのしかかる。
引き上げるどころか新八さえも船から転落しそうに引きずられていく。
黒煙立ち込める中、掴んだ手を握りしめた。
もう駄目かもしれない。
諦めかけたその時、強い力で体が引き上げられた。
へたり込んで半ば呆然としながら振り向けば、よく見た白くて丸いフォルム。

「エリザベス!」

こんな所まで来てくれたんだね、と聞くと大きく頷きながらプラカードを掲げた。

『いろいろ用があってな』

そうなんだと返そうとした所で、目の前の白い体が真っ二つに切り裂かれる。
言葉を失いながら揺れる白布を見つめていると、初めて聞く男の呆れた声が鼓膜を揺らした。

「おいおい何勝手に人ん家で仮装パーチーしてくれちゃってんだガキども、いい子はおうちに帰れ」

「ガキじゃない」

一閃。

「桂だ」

エリザベスから現れた男。
その人こそ探し続けていた男だった。
何故と問う前に、桂が斬った男が腹を抑えながら倒れていく。
甲板に叩き付けられた男に、鬼兵隊の女が悲痛な叫びをあげながら駆け寄っていく。

「銀時様ッ!」

「これは意外な人とお会いする。こんな所で死者と対面できるとは…」

能面のように表情が動かない男がそう言う。
まさかと思いつつも自分たちを助けた男を見ると、髪の長さに違いはあれど桂小太郎に間違いなかった。

「ウソ…桂さん!!」

「この世に未練があったものでな、黄泉帰ってきたのさ。かつての仲間に斬られたとあっては死んでも死に切れぬというもの。なぁ銀時、お前もそうだろう」

「仲間ねぇ…」

銀時と呼ばれた男が女の手を借りながらゆっくりと状態を起こす。
斬られたはずの腹部に出血は見られない。

「まだそんな風に思ってたとは有難迷惑な話だなぁオイ」

そう言いながら腹部から切り裂かれた冊子を取り出す男。

「やっぱりジャンプは俺を裏切らねぇ」

「まだそんなものを読んでいたか…貴様いい加減ジャンプを卒業しろ、ここで出すべきはジャンプではなくこれだろうが」

スッと差し出された教本に男が目を逸らした。

「あーそれね…ラーメンこぼして捨てた」

「貴様ァ!!ここでオチを使うんじゃない!!この後どうするつもりだ!!」

「てめえもメタ発言してんじねぇよ!」

ぎゃいぎゃいと騒ぐ大人二人を白い目で見ていると、それに気付いた桂がコホンと咳払いをして脱線した話を無理矢理戻す。

「…結局のところ、俺がこうして生きているのは貴様の無能な部下のおかげでさ。ろくに確認もせず髪だけ刈り取って去っていったわ、たいした人斬りだ」

「逃げるだけじゃなく死ぬフリまで上手くなったみてぇで何よりだよ。で?なんで此処に来た?復讐ってか?」

「アレが貴様の差し金だろうが独断だろうが関係ない、だがお前のやろうとしていることを黙って見ているわけにはいかんのでな」

その言葉の意味を理解する前に、船上に爆音が轟いた。ごうごうと音を立てて燃え盛る船に、銀時の顔が曇る。

「貴様の野望、悪いが海に消えてもらおう」































無断で乗り込んだ船はそのまま船ごと鬼兵隊の艦隊に突っ込んだ。
なんという無茶な方法で、とも思ったが気付かれぬまま鬼兵隊の船に潜り込むのには都合が良かった。
衝突前、船から見えた似蔵はまさしく兵器だった。
一人で敵艦を真っ二つにしてみせた芸当はもはや人間のものではない。
流石に消耗も激しいらしく、腕を抑えて鬼兵隊の船へと戻っていくのを見た。
鉄子と二人、乗り込んだ船の中を探し回り漸く似蔵を見つけた。
傍にいる鉄矢に鉄子の表情が一瞬歪んだが、すぐに顔を引き締める。
こちらの存在に気付いた似蔵が、今まで顰めていた顔に笑みをのせる。
それににいと笑って返してやれば右腕を振りかぶり襲い来る。
鉄子が打ったという刀を引き抜き、紅桜を受け止める。
ギリギリと嫌な音をたてる刀と体。
無理を押して動いている筋肉が悲鳴を上げる。

「そんな身体で何しに来たんだい、自分のやってること分かんなくなるくらいおかしくなっちまったかい!?」

「そういうてめェも随分顔色が悪いなァおい、腹でも壊したか?」

「腹壊してるのはアンタだろう」

突然強く掴まれた腹の傷口が開く。
襲い来る痛みに歯を食いしばり、似蔵をはじき距離をとる。

「クク、おいおいどうした血が出てるよ」

「その言葉、そっくりそのまま返してやらァ」

切れた手のひらに笑いを止めた似蔵が再び斬りかかる。
こいつの相手はどうやら思ったよりもキツイらしい。
依頼料の割り増し請求を心に誓い、再び刀を構えた。
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