企画
□白鬼は嗤う〜第二章〜
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がやがやと騒がしい人ごみ。
まったくこの街の住人の野次馬根性はすばらしいものだ。
「はいはいどいてくだせぇ」
無理やりそれを押しのけ現場へ辿り着く。
既に検死が始められているその遺体の顔は隠されているが、恐らく今までの被害者と変わらない表情で固まっているのだろう。
胸糞悪ィと毒づくと、斜め後ろに控えた黒野が視線をちらと送ってきた。
「真選組屯所程近くでの犯行、ですか」
「喧嘩売ってるとしか思えねぇ」
「そうですね…」
横行する辻斬り。
鬼兵隊の江戸入り。
これらが繋がるなら、それはそれで面白い。
辻斬り犯さえ掴めれば、後は芋蔓方式…とまではいかなくても、鬼兵隊に関する何らかの情報は得られるだろう。
特に、現在の鬼兵隊の頭たる男。
名前すらも公には知られていないそいつの情報が手に入れば。
「俺の株も上がって副長就任」
「何のことですか沖田隊長」
「こっちの話だ」
黒野が首を傾げているが、答える気は無いので無視だ。
それにしても、今回の犯行も証拠は残っていないらしい。
これ以上ここに留まっても仕方ない。
「黒野そろそろ行くぞー」
「いいんですか?現場検証とか…」
「ここにいても進展無いだろうから聞き込みでさぁ、主に甘味処とか駄菓子屋で」
「それサボリじゃ…」
ぶつぶつ何か言いながらも付いてくる黒野。
これはもしかしたら山崎以上のパシリ人材にもなるかもしれない。
いいもんみつけた、と笑うと、何かを察したらしい黒野がびくりと肩を震わせた。
さあて、どっから聞き込みに行こうか。
通行人で溢れる歌舞伎町。
その間をするりと抜けるようにして進んで行く。
「妖刀、か」
先程受けたばかりの依頼。
ヅラが連れている白いのとの会話無き空間に耐えられなくなり、丁度いい具合にかかってきた依頼の電話をとった。
その時は二つ返事で了承してしまったが、随分面倒な依頼を受けてしまったらしい。
村田と名乗る依頼主によれば妖刀だという言い伝えの残る刀を探して欲しいとかなんとか。
その妖刀について熱弁する兄とその隣で黙って座り込む妹を前に、これは早まったかもしれないと思ったが、今更止めるなど言える雰囲気でも無かった。(主に兄の勢いに押されて)
「どこから探せってんだ」
人探しや猫探しなら経験済みだが、刀探しなどしたこともない。
しかも災いを呼ぶとかなんとか。
別にそういった類が苦手だとかそういう訳ではない。
だが面倒事はできるだけ避けたい人間ではある。
だからこそエリザベスとやらのいる空間から逃げたんだが。
「そういや何の用だったんだかなァ」
そういえば今回は珍しくあの鬱陶しい長髪野郎を連れていなかった。
いつもは奴にべったりだというのに。
伝言か何かだったのか。
なんにせよ、新八と神楽が対応するだろう。
「俺は俺で片付けるか」