短篇

□世界ハ壊レヌ
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世界ハ壊レヌ?
























窓際に寄りかかりながら眼下に広がる揺ら揺らとゆれる海面をぼんやりと眺め、銀時は右手にある煙管を弄んだ。
先程から全く言葉をかわしていない為、この空間は静寂に包まれている。
しかしその静寂にも飽きてきた為、口を開いた。


「なぁ。」

「………あぁ?」


しかし相手はその静寂を破られたのに少し不満なようだ。
だが、自分は高杉の為に話を止めるなんて選択肢は用意していない為、話を続ける。


「お前はさぁ、世界ぶっ壊すっつってるけどさ。」


そこで一度言葉を切り、自分に向かって苛立ちの篭った視線を向ける高杉をチラリと一瞥し、すぐに窓の外へと視線を戻す。
話す気があるのか、と言いたげだが、別に気にはしない。


「お前はどの『世界』を壊してぇんだよ。」

「………はァ?」


訝そうな視線を向けてくる高杉を無視し、煙管を手のひらの上でくるくると回す。
相変わらず高級なモン使ってやがる、と、部屋に入って早々に高杉から奪った煙管を見て、そちらに一瞬だけ思考をやったが、視線が痛くなってきた為会話へと意識を向ける。


「松陽先生が死んだ時にさ、俺等の世界は壊れただろ?」

「…お前には今は世界があるだろうが。」

「それでも一度壊れたことには変わりねぇだろ。」


皮肉られるが、事実は事実。
気にせず続ける。


「個人の世界っつーのはさ、自分の世界の中心だと思えるような奴が死んだ時に壊れるモンなんだよ。」

「………」


何が言いたい、と言いたげな視線を無視して自分の言葉を続ける。


「お前はそういう誰か個人の『世界』を壊してぇの?それとも『世界』っていう単語を辞書で引いたらでてくるような答えを壊してぇのか?」

「………さぁな。だが、俺が壊してェのは幕府の腐った連中の『世界』だけだ。」

「………へぇ。」


それはそれは以外だ。だってお前は。


「でも、お前はソイツ等の世界を壊す為に、殺してきてんだろ?」

「まぁな。」

「その殺してきた奴等を世界の中心だと思ってる奴の世界を、お前はもう、壊してんだぜ?」


誰かを殺すということは、ソイツの関係者の世界を壊すということ。
お前はその幕府の腐った役等の世界を壊す為に、


幾千、幾万もの世界を壊してきてんだぜ?




「別に構いやしねェよ。」

「まぁ、非道なこって。」

「奴等の世界壊せるってんなら、どれだけ他の奴等の世界が壊れたって構いやしねェんだ。」

「本当にお前鬼畜だな。」

「どうとでも言えばいいさ。それに、」


そこで言葉を切り煙管を喫った高杉の方に、銀時はようやくきちんと向き直った。
高杉はそれに気づくと、煙をゆっくりと吐き出し、口元に弧を描いた。



「他人の不幸は蜜の味………って言うだろ?」





………こりゃまぁ、性質(タチ)が悪いことで。
でも、自分の口元も彼と同じ様に弧を描いているのは、自分もそんな性質だからかもしれない。

















世界ハ壊レヌ?

イイヤ、イトモ簡単ニ壊レルサ。
とてもとても、あっけなく、ね。


あとがき(という名の言い訳)→
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