短篇

□今日も。
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※痛い表現有り 現パロ・転生物 










「金時ぃ、おんしまぁたコケたがか。ほんにおっちょこちょいじゃのぉ!」


アッハッハ、と高らかに笑う坂本は、銀時の青紫色に痛々しく変色した足の脛をつついた。


「ちょ、おま、痛ぇんだから触んじゃねぇよ!!」

「痣があったら触りたくなるんが人間の本能じゃき、観念するんじゃな。」

「目が全く笑ってねぇよぉぉぉ!!」


購買で買ったパンをかじりながら、桂と高杉はそれを見ていた。


「………ヅラァ。」

「………なんだ。」

「………すっとぼけてんじゃねぇよ。テメェ、気づいてるだろ。」

「…まぁな。」



その返答に、高杉の持つパンがグシャリと潰れる。
あぁ、俺の昼飯さようなら。グッバイ俺の百五円。
コンクリートの冷たい屋上の床に零れた焼きそば。
高杉の焼きそばパンはもはや原型を留めていない。


チッと舌打ちをして、パンを後ろへ放り投げた。
高杉、と隣で諌める声が聞こえたが、きっと鳥か何かが食うだろう。



「アイツの足。」

「………わかっている。後は首もだな。」



銀時と坂本はぎゃいぎゃいと騒ぎながら走り回っている為、聞こえていないだろう。
小学生か、アイツらは。



「やっぱり俺ァ、許せねェ。」

「…今更言った所で、意味の無いことだ。」

「………なんでテメェはそんなにのうのうと見ていられる。」

「………俺とて何も思わない筈が無かろうが。」



グシャ、という音がした為桂の手元を見ると、やはり見るも無残なコロッケパン。
やはりコイツもか。


今見えるだけで、銀時の体には、首と脛に痛々しい色をした痣がある。
きっと服の下にはもっと痛々しい痕が残っているのだろう。



「考えるだけでも忌々しい。あの女は………」

「あのクソ女だけじゃねェだろうよ。」

「……あの人さえいてくれればな。」

「それこそ言っても意味ねェだろうがよ。」



銀時の首と脛にできている痣を作ったのは、銀時の実の母親と、その再婚相手である。
今は銀時の首には湿布が貼ってあり、事情を知らない者なら分からないだろうが、高杉と桂、そして坂本は知っている。
高杉は一度だけ、湿布の下に手の形の痣があるのを見たことがあった。
それが意味する事がなんなのかわからない年では無い。

その時銀時は、他の奴等には内緒な、と苦笑いをしていた。


なんで俺達を頼らない。


その一言が、言えなくて。


どこにもぶつけることができない憤りをこめて握った拳の痛みは今だって覚えている。
いいや、一生忘れないに決まっている。


銀時が良く行く病院の主治医は、髪を染めたらどうだ、と提案してきたことがある。
暴行の理由が、銀時の見た目にあると、加害者である二人が言ったからだ。
それでも銀時は、父がいた唯一の証だから、と笑いながら断った。



なぁ、俺達はどうすればいい。



「高杉。」

「あ?」

「………アイツはどうしたら俺達を頼ってくれるのだろうな。」

「………さぁな。」



俺達ができることなど、無いのかもしれないけれど。
それでも頼ってほしいと思うのは、我侭なことなのだろうか。






「坂本テメェ待てこら一発殴らせろ!」

「待てぇ言われて止まるような人間はおらんぜよ!」








今日も、俺達を取り巻く世界は変わらない。






end…?

→状況説明&あとがき
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