短篇

□護るもの
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2012銀誕 攘夷時代










ぴちゃり、ぴちゃり




刀の切っ先から滴る赤が地面に落ちる。

地面には事切れた天人やら仲間達が倒れている。
土はもうこれ以上血を吸えないらしく、滴った紅は足元に溜まっていく。



ぽたぽた



しまいには自分の陣羽織からも滴ってくるという状況に流石に顔をしかめる。

既に高杉や桂達は本陣まで戻っており、周りに息をするものは無い。
自分の息遣いだけが妙に響いて、それにさえ苛々とする。
それが嫌なら息を止めてしまえばいいだけなのだけど。
まだ、そんな気分にはならないから、ゆっくりと歩き出す。

ぽたぽた、ぽたぽた。

血溜まりの中にいた所為で、歩く度に足裏から血が滴る。
ああ、いらいらするなぁ。
行き先は本陣ではない、むしろ逆方向に進んでいく。

そういえば、帰る前にヅラが何か言いたそうなツラをしていた。
何が言いたかったかなんて、分かってたけど。
それを聞いてやれる程の余裕は無かったし。


なにより、あいつが言いたかったことは、この場所に一番適していないものだ。
たくさんの命が消えていく、この場所で。




そんなことは、言っちゃいけない。








  
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