短篇
□知らぬが仏
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*銀さん以外は記憶あり
*銀さんと真選組二人が同クラスの一年
*その他攘夷組は一学年上
*高杉が不憫なのはデフォルト
「なぁなぁ沖田くん」
「どうしたんですかぃ旦那ぁ」
いちご牛乳片手にメロンパンを頬張りながら喋る旦那は随分と器用だなとか思いながら自分の物ではない椅子を引きずる。
マヨラーがなんか言ってるが無視だ。
「なぁんかさぁ、俺先輩に目ェつけられちゃったみたいなんだよねぇ」
「テメェがか?」
「何ちゃっかり会話に参加してんでさぁ土方コノヤロー」
「座る場所がねぇんだよテメェのせいでな!」
そう言いながら土方が旦那の机に腰かけた。
そこに画鋲でも置いとけば良かった。
「お前一体何したってんだよ」
ズズーとマヨをすすりながら聞いてくる土方に旦那は思いっきり嫌そうな顔をした。
慣れてるはずの俺でさえ気持ち悪いから仕方ない、生理現象だ。
「何もしてねぇよ!人をトラブルメーカーみたいに言わないでくれるかな!俺がトラブル引き起こすんじゃなくてトラブルが俺に寄ってくるんだっつーの!」
「それを世間一般ではトラブルメーカーと呼ぶんだろうが」
「どうせトラブルするならあんな眼帯野郎じゃなくてボンキュッボンの女子が良かった」
「眼帯野郎ですかぃ?」
その単語に覚えがあったのか土方がこっちを見てきた。
残念ながら俺もその眼帯野郎が誰なのか大体見当がついてたりする。
だとしたら非常にめんどくさい。
できることなら関わりたくない。
しかし奴は先輩だったりするからもう面倒くさい。
更に面倒くさい。もう昼寝したい。
「なんか廊下ですれ違ったらものっそいガン飛ばしてきた」
絶対それはガン飛ばしてきたんじゃないと思う、と喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「坂田……もしかしてソイツの隣に黒もじゃか長髪電波いなかったか?」
「なんで土方知ってんだよ!?やだ怖いストーカーよぉぉぉぉぉ!!おまわりさぁぁぁぁん!!」
「誰がストーカーだこのクソ天パ!」
「土方さぁん、ちょっと屋上のフェンス使ってハードル走してきてくだせぇ」
「死ねってか!俺に死ねってか!!」
ギャーギャー騒いでる土方を横目に廊下に視線を向けた。
…………いや、何も見ていない。
血走った目でこっちを見てる中二と長髪と黒もじゃなんて見ていない。
沖田コロスとか書いてある紙も見ていない。
折角なら土方コロスにしてくれ。
教室にいる他の奴等が青ざめた顔をしてそっちを向いてるだとか、俺は知らない。
だって面倒だ。
あーあー空が綺麗だなー
………とか言っていたかった。
無視できるレベルの眼力じゃないあれは。
「目からビーム打ってきそうでさぁ」
「奴等ならできそうだとか思っちまうってどうなんだ」
「何の話してんのお前ら?」
「こっちの話でさぁ」
「何それ仲間外れ?酷い!銀さん泣いちゃう!」
うぅ、と泣き真似を始めた旦那には悪いが正直こっちが泣きたい。
もう胃に穴が開いてる気がする。
目から出たビームで穴開いてる気がする。
彼奴等がへばり付いてる教室のドアにヒビが入ってるような気がするのは気のせいだろうか。
いやきっと気のせいじゃない。
というか何で俺達が睨まれてるんだろうと思いながらそっちを向いてやれば更に眼力が強くなった気がする。
もう眼帯中二に関しては絶対に堅気じゃない、ヤのつく自由業だ。
「こう見ると不憫なもんですねぇ」
「何!?今日沖田君俺に対して酷くない!?」
「いやお前のことじゃねぇだろ」
「え?」
「世の中には知らない方がいい事もありやすぜ」
「まぁな」
「ふーん………」
まぁ、不憫ではあるが俺には関係の無いことだし。
「精々頑張ってくだせぇよ、セ ン パ イ」
〈知らぬが仏〉
(あんのクソ餓鬼……ッ)
(……ちくっとキツいお灸を据えにゃあならんかのう)
(とりあえず部活でしごくか)
(なんか嫌な予感が………)
(気のせいですよ土方さん、俺には関係無ぇですし)
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