〜武闘神伝〜
□一章 邂逅
1ページ/3ページ
時は平安。
都の置かれた京は天皇が住まう場所。
昼は人々の世界。
夜は妖の徘徊する世界。
そして京にはその妖を滅する事を生業とする者が多く住まう。
その者達の名は、陰陽師。
吉田新八。
彼もまた、陰陽師の一人である。
卯月のある晴天の日の昼過ぎ。
賑わう商店街から少し外れた道を彼は歩いていた。
商店街には入りきらないとでも言うように、道の両側に、ちらほらと店が連なっている。
近くには生えていないはずの桜の花弁が一枚、ヒラリと目の前を通り過ぎ、どこから飛ばされてきたのだろうかと周りを見渡していた時、後ろから声が聞こえた。
「危ないっ!!」
その声に振り向くと、間近に迫った牛車。
しかもその牛車を引く牛が暴れている。
先程の声は、その者の近くにいた者が牛車にはねられかけたのだ。
その牛車は今、自分の目の前。
避けなければ、そう思うのに、足が根を張ったように動かない。
嗚呼、轢かれる。
そう思い、諦めかけ、目をつぶった瞬間。
体が宙に浮いた。