〜武闘神伝〜

□二章 道中
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………この人、本当に武神なんだろうか。


これが、今新八が思う事である。
先程、白夜叉と名乗った、今現在自分の隣にいる男は、肩に乗る生き物…だろう物と会話している。
その会話は、人間がいつもするような、世間話とか、そのようなものばかりだ。
武神には神の血も流れていると聞くが、この男からは、神社仏閣に行った時のような、圧力…とでもいうのだろうか。そういった類の物が感じられない。
髪色や眼の色は、常人とは大きく異なっているが、世の中にはそういう人種もいると聞く。
………異国の人ではないのだろうか。
ふと、そんな疑惑が新八の心の中で生まれた。
奇妙な衣服も、異国の物という事ならわからなくもない。


「あの。」

「ん?どした。」


男が返事を返してくれたので、言葉を続ける。


「あなたは何故あんなとこにいたんですか?」

「何故…って言われてもな……何故?」

「俺に振るのか……散歩の休憩中だっただろう。」

「あぁ、そうだった、黒ちゃんよく覚えてたな。」

「銀、もう少し記憶力を鍛えろ。」

今の会話を聞いても、神や妖の類だという事は微塵も感じられない。
しかも、あの場にいた理由は、散歩。
なんというか、神々しい、の、この字も見当たらない。


「つかお前、あんま俺に話しかけない方がいいぞ?俺、多分他の人間には見えてねぇから。」

「無論、俺等もだ。」

「そーいう事だから、今迄の会話は、他の人間から見たらお前の独り言ってワケ!あ、なんか笑えてきた。」

「……は?」


上から順に、白夜叉、黒い獣もとい黒兎、白い獣もとい白兎、新八である。
白夜叉の式神の名は先程白夜叉から教えられた。
黒兎は呆れたような表情で新八を見、白兎は白兎で、白夜叉の肩に顔をうずめて、体を震わせている。
その、恐らく笑いを堪えているのであろう白兎を見その後新八に視線を向け、白夜叉は苦笑した。

………そうだ、この人はやはり人ならざる者なのだ。
その証に、周りの人々はジロジロと自分を見ている。
先程までは、目立つことこの上ないであろう白夜叉がいても、気になる程の視線は受けなかった。
完全に失念していた。
これでは自分は、一人で訳の分からない事を言っている、怪しい者ではないか。
周りの人々の視線が酷く痛い。
新八はいたたまれなくなって、思わず走り出した。
勿論全力疾走である。


「あっ、ちょ、オイ!」


白夜叉の慌てたような声が聞こえたが、今はそれどころではないのである。
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