〜武闘神伝〜

□三章 再会
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あっちぃなぁ。

何の気なしに呟いたその言葉は、思いのほか重く聞こえたらしい。
ずっと肩に乗っていた白兎がピョコンと灰の背に飛び乗り、心配そうな目で見てきた。

過保護だな、と思いつつも頭を撫でてやれば真っ赤な目を細めて嬉しそうにゆるゆると尾を振った。


普段ならばこんな真っ昼間に道の往来を歩く事などないのだが、偶然知り合った子供の誘いで彼の自宅に伺う次第となった。
何故子供を助けたかと聞かれれば、只の気まぐれ、としか答えられない。
理由があるとすれば、常より数段気分が良かったということだろう。
ただそれだけだったにも関わらず、礼など。
面倒だと思ったが、自分には珍しい事に行ってみようという気が起きた。
自分でも驚きだ。


それにしても、と前を歩く子供の背を眺める。
先ほど名を聞いたが、なんと言っただろうか。
でもまぁ俺を見ることができるあたりから察するに、潜在能力はあるのだろう。
それぐらいでは自分の気を引く程の事ではないはずなのに、何故かこの子供に興味を持った自分がいた。
これも勘って奴かね。
一人でそんな事を考えていると膝をピシと尾で叩かれた。


「そろそろ着くらしいぞ」

「そうか」


前方で子供がにこやかに何かを言っている。
さっきも注意してやったんだがなぁ。
いや、周りに人がいないからいいのか。
どちらにせよ、自分には害の無いことだしと放っておく。


ああ、あつい。





  
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