企画
□ゆめうつつにまどう
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夢を見た。
暖かい手。
それが自分の頭を撫でる。
それがとてもとても嬉しくて、優しくて、はにかんだ。
暖かい、夢。
それを見たのは、いつぶりだろうか。
ふわぁ、と欠伸を漏らしながら背を伸ばすと、ポキポキと骨がなった。
どれくらい寝ていたのだろうか。
ソファの上でいつの間にか寝こけていたからか、体中がきしんで痛い。
首を回せばゴキゴキと嫌な音が。
「痛ぇ………」
本当に何時間寝ていたのか。
寝る前には寝ていた筈の神楽は既に押入れどころか万事屋の何処にもいないし、定春も神楽と共に何処かへ行ってしまったようで。
あんな夢を見た後に誰も傍にいないというのは少しばかりこたえる。
あの暖かな手をもう一度と願っても、それが叶うことはない。
その所為か、あの夢を見た後は、ほんの少し人恋しくなる。
自分以外誰も居ない万事屋がいつもより広く感じて。
いつの間に自分はこうも感傷的になったのだろう。
もういっその事もう一度寝てしまおう。
うん、それがいいと一人で納得して和室へ向かう。
少し寝すぎなような気もするが、外に出かける気分でも無い。
しかし布団は珍しく仕舞われていた。
新八が干したのだろうかと窓から顔を出し、屋根を見上げる。
するとそこには案の定銀時の布団が。
「とりこむのは面倒くせぇしな……」
よし決めた、と窓際に座り込む。
どうやら本日の江戸の天気は良好なようで、ぽかぽかとした日差しが差し込んでいる。
それがなんだか先程の夢のようで。
少しずつ瞼が重くなっていく。
微睡みの中で、ひらりと蝶が踊った。