企画

□たわむれはもうおしまい
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部屋の障子を開けると、銀時がぐっすりと眠っていた。
月明かりに照らされた銀色が淡く光っているように見える。
枕元に座ってその柔らかな銀色を撫でると、良い夢でも見ているのか、嬉しそうに微笑んだ。


「よく眠っていますね」


銀時はここ最近になって、漸くこうして安心したように眠るようになった。
その変化が、とても嬉しい。
開けた障子の隙間から冷たい夜風が入ってくる。
この子が風邪をひいてはいけないですからね、と心中で呟き立ち上がると、夜風と共に何かがひらりと舞うように部屋に滑り込んだ。

一体何かと、それが落ちた所へと視線を向ける。


「……おや」


それは今まで幾度か見かけた蝶だった。
最初に見たのは、確かこんな月の綺麗な晩だった。
最後にあの子達に会うことができたらと、月を眺め一人呟いたあの夜に。


「本当に、聞き届けてくれたんですね」


片羽の取れたその蝶は残った羽を弱々しくふるわせた。
最後に会ったあの子が、毟り取ってしまったのか。


「やはり私が変えることはできませんでしたか」


狂気に呑まれてしまった教え子。
私の為に身を落とすことなど、して欲しくはなかった。
自分が違う選択をすればあの子がああなることも無いのだろう。
それでも、この道を選ぶことはやめられなかった。
この愛しき子達が心安らかに暮らせる国を。
そう思って歩んできた道は、どこでおかしくなってしまったのだろう。

私が死を選ばなければ、あの子も救われるのだろうか。
そこまで考えた所で、ここへ来た時の銀時の顔がふと浮かんだ。
幸せだと言った、あの顔が。


「きっとあなた達なら、自分達で前に進めますよね」


私が歩む道を変えずとも、きっと。


遠くから多くの足音が聞こえる。
もう、時間のようだ。


掌にのった蝶は、来た時と同じようにして、再び吹いた夜風に乗り空へと消えた。


だんだんと、足音が大きくなる。
彼等がたどりつくその前に。
この子と共に居ることのできる最後の時に、これだけは伝えたい。


「どうか、幸せになってくださいね」


あなた達が一緒なら、どこへでも行ける。
そう信じているから。











〜戯れはもうお終い〜

(心配はいらないよ)
(私がいなくとも、あなたたちならば、きっと)



 
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