捧げ物

□君を扶く
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数名の天人がニヤニヤ笑いながら扉から入ってくる。
その手には剣やら鎖やらなんやら。
まぁ、俺から情報を引き出すための物。
死なないギリギリまで弱らせて、情報を引き出そうとする。
いわゆる拷問というやつだ。

痛いのは嫌なんだけどなぁ、と一人ごちる。


一人の天人が大きな鍵をガチャガチャと鳴らして俺の入った牢を開けようとしたその時。



「人間共が攻めてきたぞッ!!」



開け放たれたままだった扉から新人と思われる天人が慌てて入ってきた。
その報に天人共は顔をしかめ、俺はほっとため息をつく。
これで拷問はまぬがれた。
しかし何故このタイミングで。


まさか、アイツ等、が?

まさか、



「桂、高杉、坂本の一派が本陣に!!」


尚も天人の口から吐かれる言葉に瞠目する。


なんで、なんで、なんでなんで。


何故奇襲も成功しないようなこのタイミングで。
桂達がそんな策を立てるとは思えない。
なのに何故。




頭の中でめまぐるしく思考を回転させるも答えは見つからず。


何故、何故、何故。



「グアァァァッ!!」



フル回転していた思考が天人の叫びによって停止する。
悲鳴の発生源へと目を向ける。
そこにいたのは血を吹き倒れ伏す天人。
先程報告に来た天人達だ。

中途半端に開いていた扉が大きく開かれた。




そこから覗く顔に、またも瞠目する。




「「「銀時ッ!!」」」



「な…………」




なんで、来たんだ。



目に飛び込んできた三人が天人全てを斬り捨てる。
ザシュ、と斬られた天人の血が彼等の顔にかかる。


「銀時、無事か!?」

「見りゃあ分かんだろうが。」

「それでも確認したくなるっちゅーのが兄心っちゅーもんじゃき。」



三者三様の台詞を口にすると、三人は俺を見て笑った。



「なんで………なんで来た!!」


鎖で繋がれた重い体に鞭打ち身を乗り出して吼える。
何故、なんだってこんな危険なマネを。
そう問えば、桂が笑った。


「貴様が攫われて、俺達が黙ってるとでも思ったか。」

「どうせテメェも同じ状況に立ったら俺等と同じことしやがるだろうが。」

「策も立てずに来てしもうたがの。それ位にはわし等は兄馬鹿じゃき。」


そう言って辰馬がカラカラと笑う。
その間に高杉が倒れ伏す天人から鍵を奪い取り、牢を開いた。


「策も立てずにって………どれだけ隊士達が消耗すると思ってんだ!!」

「アイツ等も望んだ事だ。」


そう言って高杉が刀を鎖に振り落とすと、ジャラリと鎖がほどけ落ちる。
一本、また一本と鎖が落ちていき、最後の一本を、砕いた。
体に加わる重さが全て無くなると同時にフラリと体が傾ぐ。
長い間拘束されていた手足には力が入らず、あぁぶつかるなと思った瞬間両側から腕を掴まれぐわんと、体と視界が揺れた。


桂と高杉に両脇を掴まれて持ち上げられる。
体勢が体勢な為、体のあちこちが痛むが先程と比べればよっぽどマシだ。


「元々は俺達三人だけで来るつもりだったのだが、隊士達に怒鳴られた。俺達を置いて勝手に行くなど許さないとな。」

「随分と愛されてんじゃねェか、銀時ィ。」


クククと笑いながら高杉が腕を引く。
痛ぇよと苦情を言えば坂本があっはっはと笑った。


「そげんに痛いっちゅーならわしがおぶっちゃろうか?」

「全力で遠慮しときます!!是非このままで!」


即答すれば坂本が再びあははと笑い、髪をくしゃくしゃにかき混ぜた。


「なにすんだこんにゃろう。」

「どっちもやられたく無いんじゃったら、そげんに無理するんじゃなか。」

「………あぁ。」


そう返せば、坂本はニカッと笑った。


「そろそろ戻るぞ。やはり兵力の差はある、これ以上此処にはいられん。帰るぞ。」

「坂本ォ、ちゃんと退路作れよ?一体でも取りこぼしやがったらただじゃおかねェ。」

「おぉ怖いのぉ、わかっとるわかっとる!!」

「どんだけお前等無茶してんだよ………」


「「お前よりはマシだ。」」
「おんしよりはマシじゃ。」


三人にそう言われると、返す言葉が無い。
大体自分の無茶が原因でこいつ等が無茶することになったのだ。


「では、帰るぞ。」

「「「あぁ。」」」








また一つ、借りを作ってしまった。
いつか、これを返せる時が来るだろうか。











  君を扶く
〜きみをたすく〜




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