シリーズ

□ある日の屋上
1ページ/2ページ



「離せこの薄毛!」

「薄毛じゃないヅラだ!あ間違えた桂だ!貴様等俺を何だと思っている!」

「ヅラはヅラであってそれ以上でも以下でもないじゃろ」

天誅!と叫びながら桂が高杉の脳天にチョップを叩き込む。
何やら奇声を上げて頭を抑え込む高杉。
それを見て笑う坂本の後頭部にも天誅チョップが。
ぐあぁ、と呻きながら地面を転がる坂本。

てめェふざけんなよ!

ふざけてるのはお前達だろうが!

これわしの脳味噌破裂しとらんか!?高杉ちくっと見てくれんかの?

お前の脳内はいつもおかしいから問題ない!

ぎゃあぎゃあと騒ぐ三人を見て、なんでこんなことになったんだっけと思い返してみる。
確か、ヅラが何か言ってたはずだ。











「明日が何月何日か知ってるか?」

「六月二十六日だな」

「…だから?」

「何の日だったかなー、ほら、誰かのた、た」

「た?」

「ほらアレだ、たで始まってびで終わる!」

「俺にはさっぱりだな、坂本分かるか?」

「まったく分からんぜよ!」

「だよなー」

「貴様等……」

言うなら言っちまえばいいのに、と思いつつも面白いからあえて分からないフリだ。
ヅラがプルプル震えてるのを見て、高杉がニヤニヤとし始める。
うわータチ悪いなあいつ。
辰馬に関して言えば笑い堪えてるつもりだろうがぷくくとかいう音が漏れてる。

「明日は!俺の!」

「ヅラの?」

「ヅラじゃない桂だ!そして誕生日だ!」

思わず叫んだヅラに辰馬が吹き出した。

「あははははは!ついに言いおったの!」

「んな事知ってる」

「なっ…」

腹いたい、とか言いながら笑い続ける辰馬。
こいつは前より更に笑い上戸になったと思う。

「でもヅラこないだお祝いしたげたじゃんか」

「母の日だったかの?」

「誰が母だ馬鹿者陸奥殿にお前がいつも何処でサボってるのか伝えるぞ」


青筋を立てたヅラの言葉に辰馬が真っ青になっていく。
むっちゃんマジ最強じゃねーか。
相も変わらず辰馬は彼女に頭が上がらないらしい。
そういう俺も先生にはそうなんだけども。

「それだけは……!それだけはダメじゃ…!」

「いや決めた俺は言うぞ」

「別にいいじゃねェか、そもそも母の日なんてテメェの為にあるような日じゃねぇか」

「男子高校生に肩たたき券など寄越すな!そもそも肩たたき券ってなんだ肩たたき券って、せめてそれは敬老の日だろう先生に贈ってやれ!」

「いや先生もまだそんな年じゃねぇよ」

足にしがみ付いている辰馬を足蹴にしながらヅラが高杉を睨む。
肩たたき券一枚は流石にかわいそうだったかもしれない。
だけど高校生なんてみんな万年金欠だ。
制作費0円な肩たたき券ほど都合のいいものはないと思う。

「いいだろうが、祝ってやってるだけでもありがいと思えや」

「相変わらず俺様何様高杉様だなオイ」

「テメェだって相変わらず糖尿病予備軍だろ」

「馬鹿にしないでくれますぅ?俺もう珈琲ブラックで飲めるもんね」

「おー!おんしも大人になったのう!」

「たっちゃんお祝いにケーキ買ってくれ」

「おーおー買っちゃる買っちゃる!」

「…それむしろ糖尿悪化しねェか?」

「ええい貴様等話を逸らすなァァァァァ!!」






という具合だ。
ギャイギャイ騒ぐ奴等を眺めながら飲みかけだったいちご牛乳をちゅうと吸うと、国宝指定すべきなんじゃないかと思うほどの旨味が広がる。
やっぱり甘いモンは最高だな、と改めて確認したところで、飲み尽くして空になったパックを、狙いを定めて放つ。

「痛っ」

「おー、命中命中、さっすが銀さん3ポイントシュートもお手のものだぜ」

「いやただ適当に投げただけだったじゃろ」

「的が高杉だから当てやすかったんだろう」

「どういう意味だヅラ」

「ヅラじゃない桂だ」

見事に放物線を描いたソレは狙いどおり高杉の頭に命中した。
うん、ナイスショット。

「晋ちゃんソレ捨てといてね」

「ふざけんな自分で捨てろ」

「いーじゃんいーじゃん、今日放課後一緒にお出掛けしてあげるから」

「デートじゃと…?」

「いや違うからソレは100%無いからつーかお前も行くんだよ」

「お?」

「いつもお前は唐突だな…で、どこに行くつもりだ」

「秘密ー、でもってヅラはお留守番な」

「なっ!?俺だけ仲間外れだと!?どういう事だ銀時お兄ちゃん泣いちゃう!」

「キモい」

うおぉぉぉ、銀時が反抗期だぁぁぁぁぁとか呻いてるヅラは放置の方向性で行く。
だって連れてける訳ないだろうが。













「いい感じに電波なの売ってるかなー」

「いつもと同じペンギンでいいだろ」

「たまには違うのもいいと思うんじゃがのー」

「まぁ、放課後見ながら決めればいいだろ」


電波な友人を持つと大変だ。



<ある日の屋上>
(結局どーするよ?)
(等身大のペンギンでいいだろ)
(じゃあ決まりじゃの)
(明日お前が学校に持ってけよ高杉)
(えっ)



あとがき→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ