シリーズ

□海と真夏と野郎共
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ガンガンと照りつける太陽。
輝く海面。
ジリジリと足裏を焼くような白砂。
そして。

「うひょー、ぼん!きゅっ!ぼん!なお姉ちゃんがわんさかおるぜよぉぉぉぉぉ!」

「いや、俺はあのビーチパラソルの下の白めの人妻がいい!」

「分かってねぇなァヅラ、ああいうのは実は子持ちだったりするんだよ」

水着の女性。
遠くからそれを眺める性春まっ盛りの高校生男子三人。
しかし双眼鏡を構えながら鼻から血液を垂れ流す彼等の後ろに忍び寄る影があった。

「テメーら……真面目に仕事しろやァァァァァ!!」

バコンバコンバコンと、黄色いメガホンが三人の頭を直撃する。

ごふっ、と砂に顔を叩きつけられた三人の顔は血と砂でバイオレンスな状態になっていた。

「何しやがる銀時ィ!」

「テメーらが真面目にやらねぇと俺までバイト代飛んじまうんだよ!」

「大体こういうのにはお前が一番飛びつきそうだろう!頭でも打ったのか?」

「フフフ…俺はテメーらが来る前…そう!昨日の時点で既に堪能済みなんだよ!」

「金時ィィィィ!おんしっちゅう奴は!一人だけいい思いしおって!」

ぎゃあぎゃあ騒ぐ四人は周りの人々はどんどんと離れていく。
四人の内三人の顔面が酷いことになってるから尚更だ。

「ったく、こんなことになるなら警備員じゃなくて海の家にすべきだったなー」

「何言うちょるんじゃ。警備員ならもし美人が溺れたら…人工呼吸ができるぜよ」

「「「人工呼吸…!!」」」

途端に目をギラギラと光らせた警備員を見た海水浴客達は顔を真っ青にして海から上がっていく。
誰だって、顔がどんなに良くとも、砂と血まみれのギラギラした男共に人工呼吸などされたくないだろう。
どんどんと海から上がっていく人々に気づかずヒートアップしてく四人。
しゃがみ込んで顔を突き合わせている四人の後ろには仁王立ちをする男がいた。

「じ、人工呼吸ってあれだよな、あの、」

「あ、アレしか無いだろう…!」

「お、お前ら人工呼吸ごときでそんなにあ、慌ててんじゃねェよ」

「おんしも十分慌てとるぜよ高杉」

「………君達」

唐突に上から降ってきた声にビクリと肩を震わせた四人。
ギギギと上を見上げたその先にはバイト先の雇い主が。

「「「「…ど、どうもー……」」」」

冷や汗ダラダラな引きつった笑顔の四人とは対照的に、にこりと笑った男は一言だけ、

「クビ」

これだけ残して去っていった。

「………ですよねー」

銀時のその言葉が真夏の海辺に妙に響いた。
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