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□空想い人
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見上げた空が、何時になく綺麗に見えたから…
もっと近づきたくなったんだ。
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鳥の囀る声が、金色の木漏れ日と共に降り注いでくる。
斜陽の街並みを横目に、小さな高台へと足を運んだ。
「シキ…見えるか?」
眼前に広がる、黄昏の風景。
大気中の塵が一定の波長の光だけを捉えて、世界をただ一色に染めている。
「不思議な光景だな。空気は透明なはずなのに、色がついてる」
返ってくる言葉はないが、それでも話し続ける。
「あんたの目の色に似てる」
見えるか? と再び呟く。
揺らぐ景色、薄闇に捕らわれていく世界。
車椅子に座った身体を、背後から抱きしめる。
「俯いてないで、顔を上げてくれよ」
ほんの少し身体を引っ張って、顔を上向かせた。
虚ろな硝子の瞳に、同色の空が映る。
「…ッ」
衝動的にこみ上げてくる何かが、息を言葉を詰まらせる。
刻を重ねたところで、終わりが見えてくるわけではない現状。
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