Main
□空想い人
1ページ/17ページ
見上げた空が、何時になく綺麗に見えたから…
もっと近づきたくなったんだ。
****
砂塵が巻き上げる中に佇んで、目を細めた。
「中将」
「…整ったか?」
は、と片膝を地面につき項垂れる男を見下ろす。
「まだ連絡が入らない。待機していろ」
前方を見据えたまま言い放って、歩き出した。
崩れた壁に寄り添うように設置された、テントの中に入る。
「どうだ?」
「雑音が酷いですが、音声は少しだけ拾えます」
無線機を調整しながら、オペレーターがこちらを振り返った。
「先程、敵方になんらかの動きがあったようだと」
「わかった。連絡を取り続けろ」
は、と頷いた彼を見てから、視線をテーブルの上に移した。
地図の上に乗せられた駒を見つめる。
アキラがいるこの場所は、本拠地と戦地の中間地点。
だが、敵方も布陣を変えないままという訳ではないだろう。
この場所は遠くあれば安全かもしれないが、囲まれてしまえば逃げ場はない。
いわば諸刃の剣と同様の場所にある。
Next >>