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□Noel
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 通学路が、色鮮やかな紅葉の絨毯に覆われる頃。
すっかり裸になった枝を凍えさせる木々が、曇天を背に憂鬱を湛える。
日増しに寒さを増す12月も、そろそろ中盤に差し掛かろうとしていた。


 寒さに身体を強張らせながら、帰宅時の日課になっている郵便ポストを覗く。
広告の類は毎日のように入っているものの、これといって郵便物など届かないそこへ、今日は珍しく封筒が一枚入っていた。

 どうやら大量に配布されたダイレクト便らしく、消印はついていない。
だが、その宛名にはアキラ自身の名前が記載されていた。
ひっくり返してみるが、差出人は書いていない。


(誰からだ?)


 何処かの企業から届いた、通信販売の広告だろうか。
それにしては、封筒が凝りすぎている。
クリスマスらしいモチーフがエンボス加工された、スノーホワイト。

 ひとまずと家の中に入り、暖房を入れながらリビングのソファに座って、それを開いた。


「クリスマス、パーティー?」


 招待状と書かれたそれには、時刻と場所しか書かれていなかった。
こんな招待状を送りつけてくる人物に心当たりがあるとするならば、彼しかいない。


(あいつ…何考えてるんだ)


 こんな紙切れ一枚で、誘いに乗ると思っているのだろうか。


「…………」


 無視しようと思ったものの、ふとそれに思い至った。


(そういえば…あいつ、来年卒業なんだよな…)


 入学してから今の今まで、何故かずっと続いている縁だ。
これまでは学校に行けば、何かしら顔をあわせる機会はあった。
だが、来年の春からは、そういった機会は皆無になるということだ。



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