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□何気ない日常
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目を開いて、見上げる天井が明るいということが、これほど安堵をもたらすものだとは知らなかった。
ただ明るいだけの天井なら、これまでも何度か見たことがある。
だが、今目に映るそれは、記憶の中のどの光景よりも温かく感じられた。
軽く息を吐いて、頭を横へと向ける。
隣に横たわる人物は、未だ心地いい眠りの中にいるようだ。
時折その口元が動くような気配を見せ、もごもごと何かを言っている。
ゆっくりと身体を起こし、その顔を見下ろす。
次いで、視線を枕元の時計に移した。
今日は休日なのだから、時間を気にする必要はない。
だが、一度目が覚めてしまったものを、どうこうする手段を思いつけない。
隣人を叩き起こそうかとも思ったが、あまりに心地よさそうな顔をしているから、毒気を抜かれてしまった。
仕方なく布団を抜け出し、着替えを持って風呂場に入る。
湯と共に、目覚めの気だるさを洗い流す。
ゆっくり過ぎたかと思うくらいの時間を要して室内に戻ったが、布団の上に横たわる姿は少しも変わっては居なかった。
呆れながらも、今度は狭い台所に立って薄いコーヒーを入れる。
インスタントだったが、濃いそれよりは薄い方が好きだった。
当然、砂糖やミルクの類は入れない。
立ったまま、それを飲む。
カップの中身を半分ほど飲んだところで、起きてこない同居人に業を煮やしはじめた。
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