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□夕轟き(ゆうとどろき)
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日が伸びて、太陽が沈む刻限が遅くなりはじめた。
時計を見ていれば定時には上がれたのだが、窓の外を見ていたから時間の感覚がずれていた。
「お? アキラ。まだ残ってるのか」
「え?」
視線を手元から、壁際の時計に移す。
時刻は7時になりかけていて、事務所のドアの向こうから聞こえてくる機械の音も止んでいた。
「すみません」
「いや、謝らなくてもいいが…ケイスケは、呼びに来なかったのか?」
そういえば、声を掛けられた記憶がない。
「まさか、あいつもまだ残ってるのか?」
しょうがねぇな、と呟きながら工場長は事務所を出て行く。
手元に広げていた伝票を束にしてまとめると、引き出しの中にしまう。
暫くして二人分の足音が近づいてくる。
「随分真面目に働くな、お前たちは」
「はぁ…」
困った顔で、ケイスケは頬を掻いている。
「もうお前たちしか残ってねぇからな。さっさと着替えて来い」
「はい。お疲れ様でした」
二人声を揃えて挨拶をしながら、頭を下げる。
揃って更衣室に入って、着替えはじめた。
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