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□子守唄
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真夜中に目が覚めて、それが薄闇だったからまだ安心できた。
「…ん」
寝返りを打とうとして、それができないほど狭い空間に横になっていたことに気付く。
「起きたのか? まだ夜だぞ」
聞こえるはずのない声がして、そちらを見上げた。
「オッサン?」
薄闇の中に、紫煙が漂っている。
「お前さんなぁ…寝るなら、ちゃんとしたとこで寝てくれや」
大きな手が伸びてきて、頭を撫でる。
がさつな仕草にムッとしながらも、しかし安堵の気持ちが湧きあがってきていた。
「…ここ?」
自分は確か、長椅子に横になっていたはずだ。
なのに、今は祭壇の陰に横たわっていた。
「お前さん、意外と重たいんだなぁ。おいちゃん、腰が痛くなっちまったよ」
へへ、と笑う。
「誰も運んでくれなんて頼んでない」
「おいおい、そりゃ酷いな。椅子から落ちかけてたのを、わざわざ助けてやったんだ。…むしろ感謝して欲しいくらいだね」
煙草の先が赤く光って、ぼんやりと顔が浮かび上がって見える。
陰影の曖昧な顔は、口調のいい加減さとは程遠い真剣な表情を浮かべていた。
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