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□空想い人
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「30分調整して連絡がつかなかったら、陣を移す。ここも、何時までも安全とはいえないからな」
「はい」
地図を見下ろし、行き先を決める。
後退しては意味がないが、前進しても同じことだ。
そのとき、テントの外が俄かに騒がしくなった。
「何事だ」
テントの中に飛び込んできた兵士が、矢継ぎ早に報告する。
「敵兵、だと?」
何時の間に忍び寄られていたのだろう。
「迎え撃つ。待機していたのなら、それができるだろう」
「それが…」
続けられた言葉に、アキラは愕然とした。
「子供?」
「子供だけではありません、女もです。身体に爆弾を括りつけられた状態で…」
吐き気を覚えるほどの憎悪が湧きあがる。
「遠隔操作型なら、近くに中継地点があるはずだ。探せ!」
指示を飛ばしながら、横目に地図を見る。
この場所を見ることができる場所。
「丘か…っ!」
緩やかに傾斜を示す先に、飛びぬけて高くなっている丘がある。
望遠鏡を使えば、この視界不良のなかでも動きがあればわかる。
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