Main -2-

□空想い人
2ページ/6ページ

「空に近づいたら、自分が違う何かになってさ…」


 遠くない、鉄製のそれにたどり着く。
はい、と鉄の感触が掌に触れた。


「飛んでいけるような気がしたんだよね」


 よ、という声と共に、そこに上りはじめる。


「おい、ケイスケ」
「アキラも上ってきなよ。今この場所は、俺たちだけの空間なんだからさ」


 軽い溜息と共に、アキラもそこを上りはじめた。
本来小さな子供向けであるその遊具は、身体の大きな二人にとっては大した障害も面白味もない。

 あっさりと頂上まで上って、そこに腰掛けた。



「あ〜…でも、やっぱり遠いや…」



 上を見上げたケイスケが、眩しさに目を細める。



「見えてるものは変わらないのに、俺たち変わっちゃったね」



 その言葉に含まれるものがあまりにも重過ぎて、自然と視線が地面へと落ちた。
贖いきれない罪、背負わされた血の呪い、平和な日常の中に感じる違和感。


「アキラ」


 鉄棒を掴む手を、上から握られた。


「なにして…ッ」


 驚いて手を跳ね上げたところで、バランスを崩した。


「アキラッ!」


 後ろにひっくり返りそうになった身体を、逞しい腕が支える。



Next >>
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ