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□優しい嘘
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「私嘘って嫌いだわ」

なんとなく呟いた言葉に、仁王が不思議そうな顔をした。

「どうしてじゃ?」

「嘘は真実じゃない。何か相手に隠してるって事でしょう?嘘をつくと嘘が連鎖して…最後には相手からの信用を無くすもの」

淡々と言葉を並べる私に、仁王が苦笑いを浮かべる。

「嘘は嘘でも、優しい嘘もあるんじゃないかのぅ…」

「優しい…嘘?」

そんなものあるわけないじゃない。

そう思ったのに言い返せなかったのは…

目の前の詐欺師がすごく辛そうな顔をしていたからだった―…











授業がおわり、お昼のチャイムが鳴り響く。

なんだか今日はやけにお腹が空いた気がするわね…

「さてと、早くご飯でも食べに行くか」

私は屋上へと足を運ぼうとした。

その時だ、彼が目の前に来たのは。

「愛子さん、俺と一緒にご飯食べない?」

幸村くんが息を切らせながら走ってきた。

断る理由なんてもちろんない。

だって私は幸村くんが好きなんだもの…。

「ええ、行きましょうか」

あまりの嬉しさににやけが出そうになる。

幸村くんの後ろからも楽しそうな男女の声。

その瞬間、幸村くんの後ろにチラッと見えてしまった―…

もう1人の…幸村くんが女の子と歩いてる…?

「さぁ、行こうか愛子さん」

にっこりと微笑む彼は、どこかの誰かさんによく似ていた…。
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