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□あるお昼休みのできごと
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「愛子ちゃん、またここに居ったんか」
いつもの低い声が耳をくすぐる。その声に振り向けば、すぐ後ろに銀色。
その銀色の髪が光を浴びてきらきら光るのを私は何回目にしてきただろう。
「私は本がだーいすきだからね」
目線をまた本に移すと、後ろから不満そうな唸り声がした。
「…愛子ちゃん」
「なーに?」
「俺、暇」
そう言って仁王はいつも私の肩に顎をのせてくる。
銀色の少しツンとした髪の毛が耳に触れてくすぐったい。
仁王は猫みたいだと私は思う。
構ってあげないと拗ねるし、ふて腐れる。
気が向いた時に相手をしてあげるとへにゃっとした顔で笑う。
つい半年前までクールで女遊びが激しい男子だと思ってたのが嘘みたいだ。
「しょーがないなぁ…」
私は読んでいた本を閉じて、仁王の頭を撫でた。
最初はきょとんとしていた仁王だけど、次第にぱぁっと明るい笑顔を私に向けた。
…か、可愛いっ/////
「愛子ちゃん、愛子ちゃん!!あんがと」
「今日は何話そうか〜」
「んー…」
そう言って話題を考え出す姿を見て、私は改めて仁王のかっこよさを認識した。
銀色の髪の毛は透き通っていてとっても綺麗だし、光が当たると金色に輝く目はまるで人形みたいだ。
私がじーっと見ているのに気がついたのか、仁王が少し顔を赤くした。
「なーに見とるんじゃ」
「…いたっ!」
おでこにわりと強力なデコピンがあたる。何よー見てただけなのに。
「…そんなに愛子ちゃんに見られたら照れるぜよ」
仁王はなにかをぼそっと呟くと私から目線を反らした。
私は彼の機嫌を悪くしてしまったらしい。
人に見られるの嫌いだもんね、ごめんね。
そんな思いで頭を撫でると仁王は機嫌を戻したのか、いつものようにニコニコと笑った。
「なぁ、愛子ちゃん」
「なーに?」
「愛子ちゃんはどんぐらい本持っちょるの?」
そう言って彼は首を傾け、私を覗き込むように机に伏せた。
上目遣いの仁王の目線。その姿にドキッとしたのは気のせいだろうか。
「んー…1000冊はあるかなぁ。小さい頃からある絵本とかもとってあるし」
私の言葉に仁王が『ほぅ』と感嘆の声を漏らした。
「そんなに集めてどうするん?」
そうか、仁王は私の夢を知らないのか。友達に言ったら散々馬鹿にされた夢だけど私にとっては大きな夢だ。
言うのは正直怖い。だけど仁王なら…
「夢があるんだ」
勇気を出して呟いた。
「大人になるまでに今よりたくさん本を増やしてね、おっきなお家いっぱいに本を並べるの。そこで大好きな人と子供と仲良く本を読めたら幸せだなぁ…って夢」
うっとりとした目で私は空を見た。いつかそんな日が来ればいいな。毎日毎日2人で子供に絵本を読んであげて…笑って…
それでその時私の隣に立っているのは―…
「…愛子ちゃんの夢、一緒に叶えたい」
「え?」
「俺が…俺以外が愛子ちゃんを幸せにしている姿なんて見とうない!
俺は愛子ちゃんの隣にずっと居たいんじゃ…これからも…一生ずっと…」
途切れ途切れの言葉。私は今までにこんなに嬉しい言葉を聞いたことがない。
だって私が一生一緒にいて欲しいのは…仁王だから。仁王しか有り得ないから。
「愛子ちゃん好きじゃ、大好きじゃ…!」
そう言って私を抱き締める仁王。すごくふわふわした気持ちになる。幸せってこういう気持ちなんだね…
「私も、仁王大好き」
私が仁王を抱き締め返すと、仁王が少し顔を離して『ほんまに?』と言った。
馬鹿だなぁ…本気に決まってるじゃない。
「ほんとだよ。だからずーっと一緒に居てね?」
にっこりと私が笑うと仁王が一段と強く私を抱き締めた。
はは…痛い。私こんなに思われてたんだ。そう思うと素直に嬉しかった。
「愛子ちゃん、ちゅーしたい」
猫みたいにゴロゴロ私にくっつく仁王が言った。
次の瞬間、私の唇が熱をもつ。
「もーまだいいって言ってないじゃん」
「だって愛子ちゃんとちゅーしたかったんじゃもん」
目の前で笑う大きな猫。
お返しにおでこに小さくキスをすると目の前にはめちゃめちゃ顔を赤くした仁王がいた。
あるお昼休みのできごと
<愛子ちゃん大好きじゃ(ぎゅー)><うわっ!//////>