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□優しい嘘
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「きれいな空だね…」
幸村くんは愛しそうに空を眺めていた。
「そうね、とてもきれいだわ」
私も一緒に眺める。
隣の幸村くんの顔をちらりと見てみた。
やっぱり…辛そうな顔をしている。
「ねぇ、幸村くん」
違う…幸村くんじゃない…この人は。
「なんだい?」
「嘘って、優しい嘘もあるんだね…仁王」
涙が頬を伝った。
その瞬間幸村くんの変装から、仁王のはっとした時の顔が見えた。
「…どうしてわかったんじゃ?」
仁王が変装を解いていく。
あぁ、やっといつもの仁王だ…
そう思うとほっとした。
「幸村くん…彼女が…いたのね」
「…あぁ」
「私に隠そうとしてたんでしょう?変装までして…」
仁王の目が、揺れる。
「お前さんに…たとえ嫌われたとしても見せとぅなかったんじゃ。好きな子だけは絶対に泣かせたくないじゃろ…」
好きな子…て、私の事?
仁王も泣きそうな顔をしていた。
私は思わず、仁王を抱き締めた。
不器用な人…
「仁王…私たち振られちゃったわね」
「…そうじゃのぅ」
仁王も私を抱き締める。
「いつか、きっと幸せになれるわよね…」
少し間を開けて、仁王が囁いた。
「俺がお前さんを幸せにしちゃるぜよ…愛子」
私は思わず赤面した。
仁王が私の唇に、唇を重ねたからだ。
「なっ…!!!」
「いつかお前さんを落としちゃるけぇ…覚悟しんしゃい」
ニヤリと仁王が笑った。
私はもう、詐欺師の策略に嵌まりつつあるのかもしれない―――…
優しい嘘
<きっともうすぐ><幸せになれる>