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□唇から唇へ
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唇から放たれる、甘い言葉。

騙されたらダメ。

信じちゃいけないのはわかってる。

だってヤツは詐欺師。

好きになってしまったらもう、ヤツの思うがままだから―…










「愛子ーおはようさん」

今日もまた、私を呼ぶ仁王の声がする。

「…おはようございます」

ちょっと機嫌悪く言えば、すぐににっこり笑って(何か企んでる笑みね)、私の頭をポンポン叩いてくる。

「なーに拗ねとるんじゃ。もしかして…俺が朝告白されとったから?」

「…!!」

図星だった。
朝、私は偶然にも部活終わりの仁王が告白されてる現場を見てしまったのだ。
まぁ、仁王と目が合っちゃったから逃げ出したけど…
好きな人が告白されてたら不機嫌になるよ、普通。

「当たりっぽいのぅ…顔真っ赤にしてかわええヤツじゃ」

その言葉に頬が一段と熱を持ち出す。
そういうの好きな子以外に言わないでよ。勘違いするじゃん…

なんでこんなヤツ好きになっちゃったんだろう。

なんで仁王じゃなきゃいけないんだろう…

考えても考えても、答えはでなかった。

だって、好きな事に理由なんてないから。

好きになってしまったらもうどうしようもないから―…

「私、全然可愛くないよっ!!」

バンッと机に手を叩きつけると、私は教室から逃げるように立ち去った。

仁王にはわからないよ、私の気持ちなんて―…












「風…気持ちいい」

今更教室に帰れなくなった私は、屋上で時間を潰すことにした。

真夏日で太陽は眩しいくらい光っているが、そんなものをまったく感じさせないくらい風が吹いている。

冷たい…

「どうして、こんなに苦しいんだろ」

言葉に出しただけで、体が軽かった。

「大好きなのにっ…」

少し大きな声で叫んでみた。

伝われ、私の気持ち―…

「愛子…?」

聞き覚えのある、甘い声。足音が一歩ずつ近付いてくる。
その瞬間―…

「えっ…」

私の腰に回された、しっかりとした手。

頬に触れる仁王の髪の毛。

かかる仁王の吐息。

全てにドキドキが止まらなくなる。

「に、仁王っ!!」

「離せって言われても、離さんから」

仁王はそう言いながら、私を抱き締める力を強める。
手すりを握っている私の手が汗ばんでいくのがわかった。

仁王は―…今何を考えてるんだろう。

私はなんで今こんなにドキドキしてるんだろう。

何にも、わからなくなった。
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