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□唇から唇へ
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「朝の、見てたんじゃろ」

「…うん」

「あれ、ちゃんと断っとるよ。俺は好きな子おるから無理っていつも言っとる」

好きな子…。
その単語を聞くと、胸が痛かった。

「仁王の好きな子も…きっと仁王の事が好きだよ」

私は力なく笑った。
私の想いはきっと、仁王に伝えちゃいけない―…

「…お前は何もわかっとらんのぅ」

ニヤッと仁王が笑った。
そのあと強引に腕を引かれ、顎を掴まれたかと思うと…柔らかい物が唇に重なった。

いきなりの出来事に閉じた目を開くと…
目の前には、仁王の顔。

「…に、お?」

「俺の気持ち、唇から伝わらんかった?」

そう言って仁王は私の唇をなぞった。
伝わらないわけないでしょうが。

「伝わったかも、仁王の気持ち」

「俺の好きな子は誰じゃ?」

「…………………わ、たし?」

私がおどおどと言うと、仁王が優しく笑った。

それは私が初めて見る、優しい詐欺師の笑顔だった。

「仁王…好き」

小さく呟くと、

「俺も、愛子が好きじゃ」

仁王が優しくキスをした。
唇に触れた部分から、何もかも伝わる気がした―…







唇から唇へ

<唇から><何もかもがハジマル>
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