SS屯所

□いちごミルク
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そっと、口の中にいちごを入れると、ぱくんと総司の口が閉じられた。
そこからすっとフォークを抜き取る。

“食べさせる”というこの行為が今日は何故かどうにも恥ずかしくて、そして千鶴を異常にドキドキさせる。

「ん、牛乳とお砂糖も案外悪くないね」

もくもくと口を動かしている総司を見て、千鶴はフォークを置いた。
すると。

「あ、千鶴ちゃんもこっち、食べてみる?」

彼はそう言って、フォークでツンツンと自分の練乳いちごをつついた。

「あ、は、はい!」

一人でドキドキしているのを悟られないように急いで返事をして、千鶴はじゃあ、いただきますとフォークを伸ばすが、いちごに届く前に「ダメ」と手がかざされた。

「……………?」

訳が分からずキョトンとしていると、総司はゆったりとした動作でいちごを刺し、「ハイ!あーん、して?」と、それを千鶴の口元へと差し出した。

「………ぇっと、あの?」
「うん?だから、あーんしてよ」
「はい?」
「だから、僕が千鶴ちゃんと同じような食べさせてあげるから早く口、開けて?」

総司は総司言ってニコニコと笑っている。

『口、開けて?』

言われて、千鶴は自分が赤くなっていくのがわかった。
だって、それは総司が深いキスを求めるときによく言う言葉…。今は違う意味で言っているとわかっているのに。

「…………。」
「ほら、はやく」
「…いえ、でも…」
「ダメ〜。早く〜」

こんな風にいちいち照れたりせずに、じゃあとノリで済ました方が百倍もスマートで、自分も追い詰められないのに、千鶴はそうすることもできない。

「ほら、千鶴ちゃん?」

こういうときの総司は絶対に引かない。
首を傾けてジリジリと迫ってくる総司に、千鶴はおずおずと口を開きかけるが…。

「もう少し開けてよ。それじゃいちごが入んないよ?ちーづるちゃん?」

そんな風に、恥ずかしさでなかなか口を開けられないでいたら。

ポタリ、と

練乳が垂れた。

「あっ……」

その場所というのがまた、千鶴の制服のシャツの上…、しかも、ちょうど胸の辺りで…。

「あーあ、付いちゃった。だから早くって言ったのに」
「すみません…」

総司がしょうがないなぁと、持っていたフォークを一度器へと戻す。

それを見てホッとしたのもつかの間、彼はその練乳が落ちた辺りをじっと見つめている。
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