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□生きた証
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「あ、千鶴!こっちだよ。」
「沖田さん!お待たせしました。少し長引い ちゃって・・・」
「大丈夫だよ。」
今日は学園祭。千鶴は現在お付き合い中の沖 田と一緒に回るつもりだ。 お付き合い中といっても前世では夫婦だった のだが・・・
「どこから行く?」
「少し回ってみませんか?何があるかよくわ かっていないので・・・」
「じゃあ、そうしよっか。」
沖田は千鶴の手を握って歩き出す。
「お、沖田さん!!
「千鶴。呼び方戻ってるよ?」
「だって・・・」
「前世で夫婦だったのに今更恥ずかしがる必 要ないでしょ?」
その言葉に千鶴は真っ赤になる。いくら記憶 があっても恥ずかしいものは恥ずかしいの だ。 それを誤魔化すように千鶴は沖田の手を握っ て引っ張る。
「千鶴、痛いよ。」
「沖・・・総司さんが変なことを言うからで すっ!!」
「はいはい。」

「わあ!色々なお店があるんですね!!」
クラスごとに開かれている出店。それを見た 千鶴は目を輝かせた。
「そうだね。で、どこか入ってみる?」
「そういえば!平助君のクラスは写真屋さん だそうですよ!!」
「へえ。面白そうじゃない。」
そう言って二人は平助のクラスに向かった。

「千鶴!総司も。来てくれたのか!!」
教室に入ると平助に出迎えられた。
「お前らを待ってたんだ!いいものがあるん だよ!!」
そう言いながら平助は奥へと入っていく。
「じゃーん!!」
しばらくして戻ってきた平助は手に持ってい たものを二人に見せた。
「これは・・・」
浅葱色の・・・新選組の羽織り・・・
もちろん本物ではないのだが、羽織りには変 わりない。
「懐かしいね。」
「はい・・・」
平助から受け取った千鶴はギュッと羽織りを 抱きしめる。
「みなさんの・・・」
私が、みんなが・・・生きた証ー・・・
千鶴は泣きそうになってしまう。
「あ、あのさ!ウチのクラス着物とか浴衣と か力入れてるから着ていけよ!」
さすがに俺や総司の着物はないけどな。と平 助は笑う。
「せっかくだからやって行こうよ。」
「そ!そうですね!!」
千鶴が笑顔になったのを見て平助はホッとし た様子だ。
「じゃ、中で着物選んで来いよ!!」
沖田と千鶴は手を繋ぎながら着物を選びに 行った。

「せっかくだから二人別々に選ばない?」
沖田の提案で千鶴は一人で着物を選んでい た。
「これ・・・!!」
千鶴が手に取った着物・・・それは以前来て いたものにとても似ていた。
「私・・・これにします!!」
千鶴は羽織りと選んだ着物を平助に渡す。
「お!いいじゃん!!着物は自分で着 る・・・よな?」
「うん!大丈夫!!」
「じゃあ、こっちで着替えてくれ!!」
案内された手作り感のある更衣室で千鶴は着 物に袖を通す。 あまり着られなくなった着物だけどしっかり と覚えている着付け方・・・ 似た着物を着て雪村の地で二人で過ごした記 憶・・・ 色々なことが思い出される。 千鶴は最後にシュシュで結んでいた髪を解い た。
「これでよし。」

淡い黄色の着物に身を包み、髪を下した千鶴 は昔のことを思い出しながら沖田を待った。
「ち・・・づる・・・?」
呼ばれて振り返った千鶴は驚いた。
「総司さん・・・」
振り返ると薄藤色の着物に身を包んだ総司が いた。沖田ではなく総司が。
「やっぱりね。」
「え?」
「僕と千鶴は考えることが同じなんだ。」
千鶴は考える。前世で総司が言っていた言 葉・・・
そういえば言われるのは二回目だ。
「あの・・・写真撮らねえの?」
遠慮がちに言ってきた平助に沖田は軽く舌打 ちする。
「総司さん!せっかくなので撮りましょ う!!」
「そうだね。じゃ、はい。」
沖田は千鶴にあるものを渡す。
「これは!」
「小道具で見つけたんだ。」
渡されたものは白い造花でできた花かんむり だった。
「さあ、早く撮ろうよ!」
「はい!!」
この日二人は前世を思い出しながら写真を 撮った。 一枚目は千鶴が花かんむりを頭に乗せて。二 枚目は新選組の羽織りを羽織って。


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