獣ノ楽園
□七夕ノ日ノ出来事
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太陽が沈み、空が橙から紫に変わり、星屑がばらつく。
その空の下で沢山の出店が開かれている。毎年恒例七夕祭りの日である。
「みんな〜、早く早く!」
右手を大きく振っているのは小柄な少年。彼の少し後に大勢の人数が居る。津を含め、全員浴衣姿だった。
「ちょっと津、いくらら何でもはしゃぎすぎよ!後々バテるわよ」
小走りで津に寄ったのは紫苑だった。
「だって、早く行かないと更に混んじゃうよ」
「そ…そりゃそうだけど」
「別に良いでは有りませんか紫苑サン」
紫苑の後ろに歩いて来た薔薇に紫苑が振り向く。
「折角の縁日なんですヨ。津クンがはしゃぐのも仕方が有りませン」
「わかるっちゃ分かるけど…」
「でハ。早く行っちゃいましょウ」
薔薇が津の手を取り先に進んで行くのを、紫苑は心配そうに見ていた。