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□『ananas』
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行き場のない熱に身体を犯されながら、投げ出された腕は白い波へと沈むんだ。
皺一つなかったシーツには爪で引っ掻いた跡と、力一杯に掴んだことでしわくちゃになっていて…外気に触れる体はひんやりするのに、それに反して身体の中は不自然な熱を帯びていた。
「ねぇ千鶴、何で背中に手回さないの?」
「…え?」
「いつもだったら、背中に腕回してくるよね」
力一杯シーツを握りしめた千鶴の手に総司は自分の手を滑り込ませ、キュッと絡ませる。千鶴がはぁ…と一つ深い溜め息を吐いた。
「総司さんの背中…、傷付けちゃう。」
「僕は男だよ?傷の一つや二つ、気にしなくていいのに。なんかいつもの君らしくないと調子が狂うな…ほら、腕回して」
「いや、でも…」
「いいから。」
促されて渋々腕を回したけれど、納得いきませんという表情を浮かべた。総司は苦笑いをこぼしながら、組み敷いた千鶴の表情(かお)をじっと見入る。
「総司…さん?」
「背中に腕、回されてる方が嬉しいんだ。落ち着くというか‥何というか。」
「それ、初耳です。」
「初めて言ったからね。」
照れ隠しなのか、噛み付く様な熱いキスをされた。リップノイズが嫌に響く。
顎が疲れる位にキスをされて、広い背中に回した腕に力を込めて自分の方へと抱き寄せて…ぐっと躰を開かれる感覚。
ぞくぞくと、悪寒にも似たものが背中を下から上へと駆けて行く…
「総司さん、」
「ん?」
「私も、総司さんのこと抱き締めるの‥大好きですよ」
身体中の体温が、一気に上がった気がした。
the end.