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□『tanquerayforest』
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「ありがと千鶴。嬉しいなぁ…今日はお揃いだ。」



大きな欠伸をしながら伸びをして、総司は千鶴の膝から起き上がった。
千鶴を見れば頭には僕の作ってあげたタンポポの冠、僕の頭にも同じ冠。



「……、千鶴?」



「えーと、その、総司さんに言わなきゃならないことが実はありまして‥」



「言わなきゃならないことって何?嫌いになったとかっていう話しは聞かないからね」



そんな筈ないのに、悪戯っぽく聞いてくる所が総司さんらしいなぁと思ってしまったり。そんな問い掛けに、違いますよと首を横に振って否定した「実は、」



「うん、」



「総司さんとの赤ちゃんが…出来ました」



「…………、、」



総司は千鶴をじっとみながら暫(しば)し停止。
暫(しばら)くしてから思い出した様に立ち上がってはどこかへ駆け出して行ってしまって…慌てて千鶴も立ち上がって総司を探すが、彼は立ち止まっては屈んで、立ち止まっては屈んでの繰り返し。
手には黄色のタンポポではなく、綿毛になった白いタンポポばかり…その様子を千鶴は丘の上から見守っていたけれど、納得がいったのか総司が走って戻って来た。



「総司さん…えっと、」

「はい、千鶴の分。」



「あ…りがとうございます。」



「生まれてくる子どもの為に、ここの丘のタンポポをもっともっと増やさなきゃ。ほら千鶴、沢山吹いて、ね?」



「あの、総司さん…」



不安そうに見つめる千鶴を総司はぎゅぅっと抱き締める。その反動で手にしていたタンポポの綿毛が宙に舞って、どこかへ飛んで行った。



「僕たち、家族になるんだね」




夫婦という形に安心して、幸せを実感していたけれど、家族という言葉を耳にして、なんだか泣きそうになってしまった。
嬉しくて嬉しくて、仕方がない。




「‥私、総司さん似の男の子がいいです」


「僕に似た男の子かぁ…千鶴がその子に構いっきりになったら、僕嫉妬しちゃうから千鶴似の女の子がいい。って、千鶴笑わらないでよ」



「とても、総司さんらしくて//」



「僕の一番はいつだって千鶴なのに…。ねぇ、いつか3人で一緒にここに来た時、気に入ってくれるかなぁ‥」



「気に入ってくれますよ。一緒に冠作りましょうね」



「まだ先の事なのに、楽しみで仕方がないよ。」



凪いだ風が二人の手にしていた綿毛を高く舞わせて遠くへ運んで行った。
生まれてくる君が気に入ってくれますように、帰り道も綿毛を見つける度に吹いての繰り返し。




後で近藤さんに電話して報告しなきゃだ。土方さんには…まぁ気が向いたらかな



to be continued...
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