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□『bellini』
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「バカかお前は…」
「‥申し訳、ございませ‥ん」
「どうして勧められるままに飲むんだ、自分がどんだけ酒に弱いか分かってんだろ」
どの位の時間自分が背負われているのか…時間の感覚もなくなる程に春歌の意識は朦朧。ただ目の前にある自分の体に馴染んだ体温へ手を伸ばしてしがみつくのが精一杯。しがみつかなくとも落されないと分かっているけれど、せめてもの行動というか、何と言うか…
「頭が‥くらくらしま、す」
「明日は二日酔いだな、」
「うぅ‥」
「ったく‥その辺に置いていったりしねぇから安心して寝てろ、」
「あぁなんだか、蘭丸さんの首筋が美味しそうに見えます‥」
「は?」
意味不明な言葉に間抜けた返事を返したのと同時に首筋に硬い何かが遠慮がちではあるが、突き立てられた。歯だ。
噛みついてもぐもぐ。春歌が息をする度にはむはむと謎の擬音まで聞こえてきた。
待て、バカか…いつもの言葉が上手く出て来ない。しかも狼狽えて歩く速度が一層遅くなる始末。動揺しているなんて認めたくはないが、間違いなく動揺している。
「はむ、はむ‥」
「おい、」
「おいひいれす‥//」
「…俺は食い物じゃねぇ」
「蘭丸さん、私のこと…時々おいしそうって言いますよね‥」
「……まぁ、」
「なんだが、その気持ち‥分かった気がします」
「……」
酔った相手をどうこうする気は更々ないが、好きな相手に首筋を噛まれ、おいしいとまで言われて‥それでも理性を崩さない自分を盛大に褒め称えたい。が、春歌は人の気も知らず、相も変わらず口をもぐもぐと動かし続ける。気合いを入れ直す意味を込めて春歌を背負い直し、揺らぐ気持ちを一蹴しようと大きく一歩を踏み出した。
「覚えてろよ‥」
「おいひいれす…」
「後で、」
「ふふふぅ‥蘭丸さん〜♪」
「ぜってー、泣かす」
覚えている筈もなく、色々な意味で泣かされるのはまた別の話‥
fine.