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□『adoucir』
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「愛してる、の響きだけで…」
「あ、その歌って…」
「はい。最近良くCMで流れているので覚えてしまいました。いい曲ですよね…」
その言葉は魔法みたいだ。本当に。
ただ"あいしてる"、言葉を5つ並べただけのただの文字の羅列なのに。そこにある力というのは計り知れない。
「お前は歌も上手いんだな」
「ううん。ピアノは弾けるけど歌の方はよく音はずしちゃうし‥恥ずかしいなぁ」
「なぁ春歌、」
「ん?どうしたの、翔くん」
手の甲で頬を撫でて顎を少し上へ。
フレンチな、本当に触れるだけのキスを1っ…
「…、愛してるって言って」
「な、なななな…あ、あい!!!」
「あー…歌いながらじゃないと、言えねぇか」
「あ…あい…、」
「俺はお前のこと、愛してるぜ」
「…あ、」
愛してるの"あ"じゃなくて、不意打ちを突かれた時の"あ"の口をしたまま春歌は微動だにせず。目は泳ぐし顔は真っ赤…
「私も、翔くんのこと…ぁぃ、してます」
「っ、」
「…翔くん?」
「な、何でもねぇよ。」
「顔真っ赤だよ、熱でもあるの?」
言われて、思っていた以上に嬉しくて恥ずかしいだなんて絶対に言えねぇっての。
翔はただただ、片手で真っ赤な顔を覆って首を横に振り続けることしか出来なかった
fine.