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□『amabile beone』
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「昨日も遅くまで作曲してたのか?」



「、ぁ…はい。」



二(ふた)息位の間を置いてからやっと返事が返って来た。いつもなら直ぐに返事をしてくれるのに、今日ばかりは酷い。
何となしに顔色は色を失って白に近く、鍵盤を走る指には力が入っていない様に見えてしまう。




「ハル、無理のし過ぎ感心しないな。無理をするのと頑張るのでは意味が違うぞ」



「分かっては…いますけど。いいフレーズが浮かんで来るとどうしても止められなくて。真斗くんに聞いて貰おうと無意識に五線譜に音符を並べてしまうんです」



えへらと笑う春歌笑顔につられてしまいそうになるけれど、ここは譲れない。真斗はピアノに向かっている春歌に歩を進めると、手にしていたシャープペンを抜き取って譜面台にそっと置いた。
それからペダルを踏んでいた足へ、それと背中に手を回してそのまま抱えて所謂(いわゆる)お姫様抱っこ。文句を言わせる暇を与えず、春歌の座っていた椅子に真斗が座ってそのまま膝へ。



「ま、真斗くんっ、何を!!///」



「ハル、少し休憩だ。」



「だ、大丈夫です。休憩なんてしている暇は…」



「駄目なものは駄目だ。嫌と言っても俺は聞かぬぞ、」



「…1時間したら、起こしてください。絶対ですよ?」



「あぁ、承知した。もっと駄々を捏ねられると思っていたが、今日は素直なんだな」


既にうとうとし始めている春歌に真斗は話掛けるが、目を閉じて片耳を胸元に当てた彼女の口元が緩んで笑みを溢す。



「真斗くんに、抱き締められると…心音が心地好くて。とくんとくん…って、安心‥するんです」



「彼氏冥利に尽きるな」



「ふふふ、私は幸せ者です。」



規則正しい寝息をたて始めた彼女の頬にキスを一つ。唇は目覚めのキスにとっておこう。



fine.
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